◆「清掃の仕事は、もっと評価されていい」

今では、大きな声でこう言えるようになった。「ジムは、体の老廃物を出すところでしょう。誰かが、それをキレイにしないと最後はみんながここに来なくなるじゃない? 清掃の仕事は、もっと評価されていいと思うな」
1時間半ほどで終え、次に女湯に向かう。まず、室内を見渡す。毎回、タイルにはカラになったシャンプーやリンス、トリートメントが10~20個転がる。「女らしいよね。わざわざ、家で使っているものを持参するのだろうね。ここに来るのが、楽しみなのかな」。時々、使用済みの生理用品も数個落ちている。会員が、風呂場で捨てて帰るらしい。浴槽の排水溝付近には、無数の陰毛がある。男湯よりもはるかに多い。女性の場合は、シャワールームにおう吐物はめったにない。
西郷が、清掃に取り掛かる。バスクリーナーを室内にいたるところにまき散らし、ブラシでこする。バスクリーナーが充満し、目がしみる。西郷はゴーグルとマスクをして作業を続ける。男湯に比べてスムーズに進む。会員たちの汗や吐いたものが少ないからだ。
◆サウナに大便?
難所は、座って顔や髪を洗うところの排水溝付近だ。ここに、2週間に1回ぐらいのペースで大便がある。毎回、黒々して細長い。男湯ではまず見かけない。「こんなところでするの? 信じられない。たぶん、風呂場のどこかでしてここまで流されてきたのかな。ウンチがある中で、風呂に入るの?」。当初、西郷はこの行為を不可解に思ったが、3年目になると驚かないという。毎度のこととして受け止め、シャワーで排水溝に淡々と流し込む。「男は吐くまで、女はウンチをするまで運動するのが、ここのジム」。こんなつぶやきをしながら、清掃を続ける。
クライマックスは、サウナだ。閉館しているが、室内は依然、45度を超えている。12畳ぐらいの室内にバスクリーナーを大量にまく。会員が腰かける木の長い椅子にはところどころ、小さな大便がついている。男湯にもサウナはあるが、ほとんど見ない。
西郷は「女の体って不思議よね」と言いながら、濡れた雑巾をつかみ、慣れた手つきで取る。暑さのあまり、汗が飛び散る。

