◆元行員が超えてしまった“禁断の一線”
被告人は当時、営業課長や支店長代理などの役職に就いており、貸金庫の予備鍵を管理する立場にあった。当然のことだが、被告人には顧客の金品に手をつけないという強いポリシーがあったという。しかし、検察側の証拠によると、犯行をはじめた2020年以降、FXによる損失は計11億円にのぼり、もはや自力で返済することができないまでに膨れ上がってしまった。そんな損失だけが積もり上がっていく状況に、被告人の“強いポリシー”は崩れ去ることに——。顧客の貸金庫から数百万円ずつ現金を持ち出しはじめたのだ。
◆被告人が陥った「卑劣すぎる自転車操業」の実態

「とにかく絶対に返すという思いから、原状回復をするために詳細なメモを最後の最後の一人まで記録していました」
被告人は犯行後、一部の顧客の貸金庫に現金を戻した。しかしその現金は、他の貸金庫から金塊を盗み出し、それを質入れしたことで補てんされたもので、まさに自転車操業の状態だったのだ。

