◆営業時間外を狙った巧妙な手口と隠ぺい工作
一連の供述から、計画性の乏しい短絡的な犯行にも見える。ただ、被告人の犯行の態様は、立場を利用した悪質と言わざるを得ないものだった。被告人が貸金庫に入る時間は、決まって営業終了後の午後3時以降だったという。その理由について、被告人は貸金庫へつながる自動ドアの開閉時間が記録されていたためだと説明。営業中のみ記録されていたことから、営業時間外を狙ったとのことだった。
さらに検察側の質問では、貸金庫の開閉された履歴を記録するパソコンの電源を切ったこともあったことが明らかとなった。ときには、金品を盗み出した貸金庫の顧客が支店に来ることもあったが、被告人はこのように伝えていたという。
「(防犯カメラの)モニターを見て、お客様が来店するかを確認したりしました。来店してしまったときには『貸金庫が故障していて』と言ったこともありました」
2024年10月、被告人は約2年間勤務した練馬支店から玉川支店へと異動。異動先の玉川支店でも貸金庫の予備鍵の管理を任されていたことから、同様の犯行に及んだ。また、補てんできなかった練馬支店の貸金庫の予備鍵を持ち出し、ダミーの鍵を保管していた封筒に入れて隠ぺい工作まで及んでいたという。
そして、弁護側から公判請求されている事件以外も含めた被害額について質問され、被告人から記事冒頭の発言がなされた。
「金額は約100名ほどから、17億円から18億円になります」
◆「懲役9年」の実刑判決が言い渡される

また、被告人は借金を穴埋めするための「短絡的な犯行」とした上で、「犯情はまれにみる悪いもので、刑も見合ったものにならざるを得ない。厳しい非難を免れない」と断じた。
これに対して、被告人側はこの判決を不服として、今年10月16日付けで東京高裁へ控訴している。

