8月末から10月にかけて、『marie claire』 のような雑誌を作る身にとっては、とても忙しい時期でもあります。
9月は東京での「楽天ファッション・ウィーク東京」、またそれに続いてニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリとファッションウィークが続いて開催されました。東京での大型店舗のオープンやイベントも頻繁にあり、また弊誌のゴルフ・イベント「marie claire open golf 2025」も9月29 日に開催されました。
この忙しさに、今年の歴史的といってもいい暑さはとても堪えました。
それでもファッションの世界にいる者としては、ショーを直接見ることは大切にしたいと、9月23日から29日まで開催されたミラノ・ファッションウィークを取材しました。
ヨーロッパを覆う暗い気分を吹き払うかのような、明るくカラフルなコレクションが目立った今回
ヨーロッパ全体を覆う不安定な状況の中で、現実を忘れたいという気持ちの表れなのでしょうか、コレクションは全体的に明るく軽快で、華やかなものが多くみられました。「フェンディ」はメンズとウィメンズの合同コレクション。往年のモデルも登場し、明るく華やかな雰囲気の軽快なコレクションを発表しました。「マックスマーラ」はミニマリズムの中にもロマンティックさが感じられ、とても印象的なコレクションで、クリエイティブ・ディレクターであるイアン・グリフィスの新境地ともいえるのではないかと思います。「ジル サンダー」は以前ジル・サンダー自身が開催していた会場でショーを開き、原点回帰を感じさせるクリーンなコレクションを発表。新クリエイティブ・ディレクターのシモーネ・ベロッティの就任後初めてのコレクションは、好評のうちに迎えられたと思います。「プラダ」は何の仕掛けもないオレンジに塗られたフロアの上でコレクションを発表。我が道を行く発表形式でアイコンのアイテムを新しい組み合わせや形で発表しました。そこに「プラダ」の自信を感じ取ったのは私だけではないと思います。

クリエイティブ・ディレクターが元「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリアに変わった「グッチ」は、通常の発表形式ではなく30分の映画を公開。デミ・ムーアなど映画の登場人物が「グッチ」を身に着けていて、上映会場のすぐ隣の部屋でそのウェア、アクセサリーなどが展示されていました。トム・フォードの時代の「グッチ」とアレッサンドロ・ミケーレの時代の「グッチ」が融合したような感じで、慎重な姿勢の中にも刷新された「グッチ」の可能性を感じることができました。


ほかにもイタリアの職人技を前面に押し出した「トッズ」はアイコンのゴンミーノの持つ要素をウェアやアクセサリーに使用。またイタリアの職人技といえば靴の「サントーニ」「ジャンヴィト ロッシ」「ジミーチュウ」「セルジオ ロッシ」、バッグの「ヴァレクストラ」「フルラ」「フランツィ」「セラピアン」などでの展示会ではそれぞれのブランドが趣を凝らした展示会を開催し、新作デザインを発表しました。「ロロ・ピアーナ」や「ブルネロ クチネリ」のようなイタリアの職人技と上質な素材が強調された展示会やパーティはイタリアン・ラグジュアリーな雰囲気の中で展開され、見に来た我々をほっとさせてくれます。



全日程はいられなかったので、好調の「フェラガモ」や「ドルチェ&ガッバーナ」「ボッテガヴェネタ」といったイタリアを代表するブランドを見ることができなかったのは残念でした。
おおきな喪失感を誰にも感じさせたジョルジオ・アルマーニのショー
9月4日に亡くなられたジョルジオ・アルマーニのショーには、アルマーニと関係の深かったリチャード・ギア、ケイト・ブランシェット、グレン・クローズといったハリウッドスターが会場に姿を見せました。「エンポリオ・アルマーニ」のほうも、いつもと変わらないエレガンスさは健在で、ショーの後、しばらくはスタンディング・オベーションがやみませんでした。しかし、もちろんアルマーニは出てこず、みなアルマーニの幻影を求めるがごとく、しばらくは会場を去ろうとはしませんでした。

ミラノの街頭や地下鉄の駅には「アルマーニ」のポスターや映像が流れ、いまさらながら大きな存在がなくなったのを実感させられました。
2025年10月30日
・見応えのある職人の手仕事【マリ・クレールデジタル編集長のパリコレ日記】
・ジョルジオ・アルマーニ逝去。不世出のデザイナーの素顔
