東京・渋谷駅に近いセンター街の入り口には、「禁止だよ!迷惑ハロウィーン」と書かれた横断幕が下がる。明日(10月31日)にハロウィーン本番を控え、にわかに緊張感が高まっている。
今年も渋谷区は、路上飲酒や迷惑行為の防止を目的に、ハロウィーン期間に大規模な規制を実施する。
渋谷区、警備員を配置しパトロール強化
渋谷区によれば、ハロウィーン当日の10月31日夜から翌早朝にかけて、歩行者等の滞留を防ぐため渋谷駅周辺に警備員約125人を配置するという。
区の職員も、路上飲酒・喫煙のほか、路上販売や客引きなどのトラブル防止のため、前日と当日に夜間パトロールを行う予定だ。
また、区は一部の店舗に対して酒類販売自粛を要請、ゴミ回収場所の設置や公衆喫煙所の一時閉鎖なども実施する。
さらに渋谷駅周辺を中心に、道玄坂エリアなど広い範囲で、状況により検問や交通規制を実施するほか、電動キックボードシェアのLUUPも、渋谷区21か所のポートで期間中一時的に利用ができなくなる。
渋谷のシンボルである「ハチ公」は、滞留防止とハチ公像の保護のため、30日午前6時頃から仮囲いが設置され、若者を中心に人気エリアとなっている「宮下公園」は、当日15時に閉園するなど厳戒態勢だ。
条例改正「夜間の路上飲酒禁止」の“効果”
一方で、今月2日、渋谷区の長谷部健区長は会見で今年のハロウィーン対策のキーワードを「禁止だよ!迷惑ハロウィーン」と発表。「地域に根差したいいハロウィーン(イベント)もある」としたうえで、「路上飲酒や喫煙、ごみのポイ捨てといった迷惑行為」をやめるよう呼びかけた。
昨年まで出していた「ハロウィーン目的で渋谷に来ないで」「渋谷はハロウィーンを休みます」という来街自体を控えるようなメッセージに比べると、今年は“共存”を意識したトーンに変わったようにも見える。これまでの規制の効果が表れているのだろうか。
渋谷駅周辺安全対策を所管する渋谷区土木部の企画管理課担当者は、弁護士JPニュース編集部の取材に対し「一昨年、昨年と来街自粛を呼びかけたことで、来街を予定していた方々にもご理解をいただけた。警備員を配置し、人の流れを一方通行に整備したことで滞留も抑制でき、想定より落ち着いた(ハロウィーン)当日だった」と振り返る。
また、渋谷区では昨年「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」を改正した。
もともとは、ハロウィーンや年末のカウントダウンなどにおける迷惑行為を規制するために2019年に制定された条例だったが、訪日外国人(インバウンド)の増加などから迷惑路上飲酒が常態化。それに伴い、ごみの放置や騒音などのトラブルも深刻化していた。
これに対応するため、昨年10月1日から施行された改正条例(施行規則)では、午後6時~翌朝5時の間、路上や公園など公共の場所における飲酒を通年で禁止。飲酒禁止エリアも拡大した。
違反しても罰則はないが、区の担当者は「条例改正も当日のトラブル防止に効果があった」と話す。
外国人観光客へのマナー啓発が新たな課題
しかし、渋谷を訪れる訪日外国人は増えており、ハロウィーン期間も例外ではない。昨年のハロウィーン翌日(11月1日)には、長谷部区長が会見で「例年と違い、仮装している外国人が多かった」と振り返っていた。
区の担当者は、「今年の課題は外国人に向けたマナー啓発、滞留抑制です」として、パトロール中の多言語での発信を強化するという。
2018年には、ハロウィーン直前のセンター街で軽トラが暴徒らによって横転させられる事件も発生している。この事件では、男10人が暴力行為法違反(集団的器物損壊)の疑いで検察に書類送付された。10人には日本人のほか、訪日外国人も含まれていた。
「Trick or Treat(お菓子をくれなきゃイタズラするぞ)」の掛け声が有名だが、ハロウィーンは決して、犯罪にあたる行為や迷惑行為までが免責される“魔法の日”ではない。節度を持って楽しむべきだろう。

