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ウェルビーイングな未来のための合言葉「また、にしない。まだ、にしない。」認知症との新しい向き合い方

ウェルビーイングな未来のための合言葉「また、にしない。まだ、にしない。」認知症との新しい向き合い方

変わり始めた「認知症観」

映画『アリスのままで』をご存じだろうか。若年性アルツハイマー病と診断された50歳の言語学者アリスが主人公の人間ドラマだ。主演のジュリアン・ムーアは、記憶を失っていく不安や、自分を見失っていく恐怖を繊細かつ力強く演じ、観る者に認知症の現実を深く刻み込んだ。映画が公開されてから10年後の現在、認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー病をめぐる状況は大きく変化している。研究の進展や、アルツハイマー病の原因物質の1つと考えられているタンパク質「アミロイドβ」の異常な蓄積に直接働きかける新薬の登場、当事者の声などにより、かつては「人生の終わり」と捉えられがちだった認知症は、「共に生きる病」へと認識を変えつつあるのだ。

『アリスのままで』の制作当時より大きく変化した認知症事情
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2025年に行われた日本イーライリリーによる「MCIまたは軽度認知症当事者への意識調査」では、当事者の約9割が「自立した生活を維持できている」と回答。また、同調査では早期段階で診断を受けた当事者は、「もの忘れを感じた時に、医療機関を受診するタイミング」が、中程度以上の当事者や一般生活者よりも早い傾向にあり、違和感をそのままにしていないという結果も出ている(下部図を参照)。

イーライリリー

MCI(軽度認知障害)とは?

記憶力や判断力などの認知機能が低下しているが、日常生活には大きな支障がない状態。認知症の前段階であり、早期発見と対応によって進行を遅らせる可能性があるとされている。なお、認知症は、ひとつの疾患の単位ではなく、さまざまな原因疾患に起因する「状態」。脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいう。

合言葉は「また、にしない。まだ、にしない。」

9月の「認知症月間」には、認知症当事者、家族、医師、企業・団体が共同で考案した新しい合言葉が発表された。それが「また、にしない。まだ、にしない。」。小さな違和感を年齢や疲労のせいにせず早めの一歩を、というメッセージが込められている。

認知症月間

ポスターダウンロードはこちら

「認知症の人と家族の会」で理事を務める平井正明さんは、合言葉の考案プロセスに参加した当事者の一人だ。自身の初期症状を「ふわっと頭が浮くような、ずっと宙にいるような感覚」と表現。不調の原因がわからないまま、確定診断までに2年を要したという。「それまでと同じ生活を送らなければならないのに、うまくいかないことばかりで苦しかった。でも診断がついたことで、はっきりと自分の状態がわかり、新しい方向に向くことができた。後回しにして後悔しても、どうしようもない。それなら早くにアクションを起こして、いろいろなことにトライしていける環境を作ることが大切だと思います」

当事者の立場から「意識を変えて行動に繋げて」と平井正明さん

同会副代表理事で、家族の介護経験を持つ花俣ふみ代さんも、早期対応の意義を語る。

「どんな病気でも早めに確定診断を受ければ、治療の選択が広がる。それは認知症でも当然のことですが、なぜか認知症に関してだけはなかなか早期受診に繋がらない。なぜかと考えてみると、認知症に関する偏見や誤解がまだまだ根強く残っているから。だから先送りということに。でも、平井さんのような当事者の声を聞いていただけると、早期対応が大事だとお感じになるはず。早めに受診する、早めに発見する、早めに仲間と繋がるための早期診断にどれほどのメリットがあるのか、どのぐらいその後のステージの様子を変えるのかということに、もっと着目していただきたいと思っています」

「早期対応は家族にとっても救いになる」と花俣ふみ代さん
配信元: marie claire

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