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里親登録の6つのステップ

※この記事は2020年3月3日に公開した記事を再編集しています

「家族」とは何か?血のつながりがあっても関係が上手くいかないこともあれば、他人同士であっても強い「絆」を感じることもある。

親の病気や離婚、虐待などさまざまな事情により、生みの親と離れて暮らす子どもが、別の家庭で一定期間暮らしを共にする「里親制度(養育里親)」。他の先進国では普及が進み、社会的養護(※1)下にある子どものうちアメリカでは82パーセント、イギリスでは73パーセントが里親家庭で暮らしているのに対し、日本では25パーセント(※2)にとどまっている。

また、国際的にはとくに乳幼児については家庭での養育が優先されているが、日本では乳幼児の大半が3歳未満の子どもを保護し養育する乳児院で生活している。その背景にある一因には、里親制度に対する認知度の低さにある。

図表:各国の社会的養護の子どもたちの里親委託率(2018年度前後の状況)

各国の社会的養護の子どもたちの里親委託率を示した横棒グラフ:
・イギリス 73.2%
・ドイツ 48.3%
・フランス 44.2%
・イタリア 52.4%
・アメリカ 81.6%
・カナダ(BC州) 85.9%
・オーストラリア 92.3%
・香港 57.0%
・韓国 29.6%
・日本 25.1%
※ 「乳幼児の里親委託推進等に関する調査研究報告書」(令和2年度厚生労働省先駆的ケア策定・検証調査事業)
※ 日本の里親等委託率は 、令和5年度末(2024年3月末)
※ ドイツ、イタリアは2017年、フランス、アメリカ、カナダ(BC州)、香港は2018年、イギリス、オーストラリア、韓国は2019年の割合
※ 里親の概念は諸外国によって異なる

日本財団ジャーナルでは、里親制度についてより多くの人に知ってもらうため、全8回にわたって里親制度やその利⽤の仕⽅について特集。第1回⽬は「そもそも⾥親制度とは何か?」というテーマで、東京都福祉保健局にて少⼦社会対策部育成⽀援課⻑を務める⽟岡雄太(たまおか・ゆうた)さん(※)にお話を聞いた。

  • ⽟岡雄太さんの役職は2020年3⽉時点のものです

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家族のあり方は、もっと多様でいい

「里親制度について、耳にしたことはあるけど詳しい内容は分からない、という方がほとんどではないでしょうか」

取材に応じてくれた玉岡さんは、このように切り出した。

何らかの事情により⽣みの親と離れて暮らす⼦どもは、⽇本全体で約4万2,000⼈。そのうち8割近くが乳児院や児童養護施設で⽣活を送っており、⾥親等(※)の家庭で暮らす⼦どもは約8,200⼈(2024年度※)しかいない。もっと多くの子どもたちが家庭の中で暮らせたらと、東京都では企業や医療機関と連携し、里親についてさまざまなPR活動を展開している。

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玉岡さんと、里親制度普及啓発キャラクター「さとペン・ファミリー」を起用した広報ツール

「世の中には、子どもに恵まれず苦しんでいるご夫婦と、家庭で暮らしたくても暮らせない子どもたちがいます。日本は血縁を重んじる傾向がありますが、『家族』のあり方はもっと多様でいいのではないでしょうか」

その多様な選択肢の一つが、里親制度であると玉岡さんは語る。

⾥親は養⼦縁組とは異なり、法的な親⼦関係にはなく(親権は実親にある)、実親の状況に応じて、⼦どもは⾥親宅に迎えられ⼀定期間暮らした後実親の元に戻るか、18歳になって⾃⽴するまで⼀緒に暮らす制度だ。⾥親⼿当(⽉額9万円)が⽀給され、⼀般⽣活費(⽉額5〜6万円ほど)なども⾃治体から⽀給される(※)。

  • 2025年4⽉時点の費⽤

インフォグラフィック:養子縁組と里親制度の違い 子ども達があたたかい家庭で育つために生みの親のもとで育つことができない子どもたちの数は 42,000人。最新の動きでは、2017年4月に施行された改正児童福祉法で、家庭と同様の養育環境のなかで、継続的に、子供が養育されるよう養子縁組や里親、ファミリーホームへの委託が原則となった。 1. 養子縁組:養子縁組には特別養子縁組と普通養子縁組の2種類がある。特別養子縁組では、生みの親との法的な親子関係が消滅し、育ての親が法的な親子関係及び親権を持つ。子どもの年齢は原則として15歳未満。原則離縁はできず、一生親子である。国からの補助金は0円。普通養子縁組では、生みの親・育ての親共に法的な親子関係が存在し、親権は育ての親が持つ。子どもの年齢制限はない。ただし、養親より年上は認められない。離縁が可能である。国からの補助金は0円。 2. 里親:里親は生みの親が親であり、親権を持つ。里親(育ての親)との法的な親子関係はない。子どもの年齢は原則として18歳まで。途中で生みの親元へ戻るか、18歳で自立する。国から里親手当として月額9万円と養育費が補助される。
養子縁組と里親制度の比較表

子どもが里親家庭で暮らすことの重要性について、玉岡さんは「児童養護施設でも職員の方が一生懸命尽くしていますが」と前置きをしてからこう話す。

「一番は何といっても、特定の大人と『愛着関係(心理用語でアタッチメント)』を築ける点ですね。これは、人間同士の信頼関係や絆であり、他者とのコミュニケーション能力や社会性を築く基盤になります。特に幼少期にこの愛着関係を築くことが、自己肯定感や心身の健康にとっての支えになります」

他にも里親制度は「子どもたちが大人になった時の『家庭』というロールモデルを学べる」といった役割を担う。

「里親は共働きの方でもなれますし、実子がいてもなれます。子どもが委託されている間は養育費や里親手当が支給されるなど、経済的なサポートもあります。里親制度に興味のある方は、ぜひ地域の児童相談所(別ウィンドウで開く)にお電話でお問い合わせください」

里親になるには、事前登録が必要

「里親になるためには、自治体が定めた一定の要件をクリアし、事前研修などを受ける必要がありますが、特別な資格は必要ありません」と話す玉岡さん。実際に里親になるには、子どもの養育に必要な心構えや知識を研修で学び、家庭訪問などを経て、知事から認定を受けて⾥親登録をする必要がある。東京都の⾥親登録数は2023年度末の時点で1,285世帯、委託数は454世帯(※)となっている。

[里親登録までの6つのステップ](※)

  • 里親にまつわる制度は、自治体によって異なる
  1. 児童相談所へ問合せ(別ウィンドウで開く)
    • 地域を管轄する児童相談所へ、里親登録をしたい旨を電話にて連絡し、面接の日程調整を行う。里親登録を検討している段階でも、問い合わせや質問をすることも可能。
  2. 登録要件の確認(別ウィンドウで開く)
    • 管轄の児童相談所で職員と面接し、里親制度の内容について説明を受ける。里親の登録や児童の委託などに関して疑問や不安に感じる点について質問もできる。その際に、登録の要件や里親として望ましい条件(里親を希望する動機、家族構成、住宅環境等)についても話をする。この時点で、里親をすることに迷いがあっても問題はない。
  3. 認定前研修申込・受講
    • 座学2日間(別ウィンドウで開く)施設実習2日間(別ウィンドウで開く)を受講する。座学では、専門家や里親経験者から「社会的養護」という概念や「子どもの養育」に関する知識を学ぶ。施設実習では、「児童養護施設での生活」体験を通して子どもに関する理解を深める。いずれも夫婦(もしくは同居する養育を補助する人と共に)揃って受講する必要がある。
  4. 申請書類を作成・提出(別ウィンドウで開く)
    • 研修を受講した上で、里親登録をしたいという意思が固まったら、管轄の児童相談所に申請書類を提出する。
  5. 家庭訪問を受ける(別ウィンドウで開く)
    • 児童相談所などの職員が家庭訪問し、住居環境や家族関係等について、家族全員(同居人含む)から聞き取り調査を行う(所要時間2〜3時間)。申請書が受理されてからおおむね数週間後に実施される。
  6. 有識者による里親認定部会の開催(別ウィンドウで開く)
    • 児童福祉審議会の里親認定部会が2カ月に一度開催され、申請書の内容や、家庭訪問の結果を踏まえて、有識者が審議を行う。

1から5までの工程を経て、6の審議会における諮問(しもん)結果を踏まえ、東京都知事が里親として認定し、里親登録される。2年ごとに登録更新の手続きが必要となる。

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