里親制度は「子どものため」の制度
里親登録後「いつ子どもが来ますか?」とよく質問を受けるという玉岡さん。里親制度はあくまでも「子どものため」の制度になるため、子どもの年齢や置かれた状況を重視し、施設での面会、交流を重ね様子を見ながら児童相談所が委託を決定する。

「子どもとの交流は、まず日帰りでどこかにお出かけし、数日の外泊、長期外泊などを重ねていただきます。その後に、お互いに希望があり、この組み合わせが望ましいとなれば、里親のもとに子どもを委託することになります。この期間は、子どものペースに合わせて決められ、数カ月から半年以上かかることもあります。委託後は、児童相談所を中心に、乳児院、児童養護施設、里親会、社会福祉法人やNPOなどの里親支援機関が、里親と共に子どもの支援に当たります」
地域の関係機関や民間団体、里親仲間が一丸となって子どもを育むのが里親制度なのだ。
「里親は養子縁組と違って戸籍上の親子にはならず、委託期間は2カ月以内の短期間から10年以上の長期間まで、子どもの事情によってさまざまです。子どもにとっては、頼れる大人が実の両親以外にいる、巣立った後も強い絆が生まれるなどといったプラスの面がたくさんあります。子どもだけでなく、大人にとっても人生が豊かになる選択肢の一つとも言えるのではないでしょうか」
里子との生活は、子どもがいたずらなどをして親の愛情を確かめる「試し行動」や実親の存在や生い立ちを告げる「真実告知」といった、乗り越えなくてはいけない壁もある。
「里親さんには、そんな時のためにも、子どもに対し向き合えるように、夫婦でしっかり話し合いを重ね深め、同じ方向を向いていていただくことが大切です」
家族とは、「ある」ものではなく、手をかけて「育む」もの。
日本が誇る名医、故日野原重明(ひのはら・しげあき)さんの言葉だ。大変なこと、楽しいこと、共に歩みさまざまな経験を重ねてこそ、人は家族になれる。それは実の親子も里親も同じで、いろいろな絆や家族のかたちがあるからこそ、社会はより優しく、豊なものになるのではないだろうか。
撮影:十河英三郎
- ※ 里親には養子縁組を前提とする養子縁組里親もいますが、今回の記事においては、養子縁組をせず、一定期間子どもを預かる養育里親(東京都においては養育家庭(里親))について記載しています
- ※ 里親にまつわる制度は、自治体によって異なります。詳細はお住いの地域を管轄する児童相談所までお問い合わせくだ

この記事の取材・編集は東京都福祉保健局にご協力をいただいています。