いつまでも輝く女性に ranune
堪忍袋の緒が切れました…年金18万円・貯金800万円の65歳母、「二世帯住宅」を買って安堵も一転。この世で最も愛する息子が「最も憎い存在」へと変わったワケ【FPの助言】

堪忍袋の緒が切れました…年金18万円・貯金800万円の65歳母、「二世帯住宅」を買って安堵も一転。この世で最も愛する息子が「最も憎い存在」へと変わったワケ【FPの助言】

高齢者の単身世帯が増える一方で、「子ども世帯との同居」を望むシニアは少なくありません。医療や介護の不安を感じ、家族のそばで暮らす安心感を求めたとき、選択肢にあがるのが二世帯住宅です。しかし、購入に際しては意外な落とし穴もあって……。本記事では、Aさんの事例とともに親子リレーローンの注意点について、FPオフィスツクル代表・内田英子氏が解説します。

「息子と一緒なら大丈夫」―そう信じていました。

現在65歳のAさんが夫を亡くしたのは、息子が大学2年生のときでした。突然の別れに深い悲しみに沈みましたが、「この子の将来を守らなければ」と奮起。パート勤務を増やし、一家の大黒柱として懸命に働き、息子を無事に大学卒業まで導いたのです。

その息子も35歳になり、Aさん自身も定年を迎える年齢に。ふと、「これからの暮らしを、どこでどう過ごそうか」と考えるようになります。

夫が残してくれた家は高台にあります。買い物や通院にも坂道を上り、車が必須の生活。

「もっと暮らしやすい場所に引っ越せないかしら」便利な場所への住み替えを検討しはじめたAさんは、不動産会社を訪ねました。

「お一人での住宅ローンは難しいですが、親子リレーローンなら可能です。お子さんと一緒に借りれば安心ですよ」担当者の言葉に希望を感じたAさんでしたが、説明には専門用語が多く、内容を深く理解できないままでした。

不安が募る一方で、「でも、私にはあの子がいる」と思い直します。

「あの子は大学も出てしっかりしている。私よりずっと詳しいはず」そう信じて息子に話してみたところ、息子はあっさりと快諾してくれました。

「いいよ、一緒に住もう」

久しぶりに“家族で暮らす未来”がみえた気がして、Aさんは嬉しくて仕方がありません。

その後、息子も一緒に不動産会社と金融機関での面談を重ねました。真剣に話を聞く息子の様子にAさんの胸は熱いもので満たされました。

夫亡きあと、たった一人で守り育ててきた息子。その息子がこれからは、自分を守ってくれようとしている。苦労が報われたように感じました。息子の助けに背中を押され、Aさんは持ち家を売却。その資金800万円を頭金に、新しい家を購入します。「これで老後も安心ね」 Aさんは“親子で支え合う二世帯生活”を思い描き、安堵していました。

安心のはずが一転、息子の言葉に愕然

引っ越しから数週間後。荷ほどきも終わり、ようやく新しい生活に慣れはじめたころのこと。Aさんは、息子と今後の返済について具体的な話をしていなかったことに気づきました。

Aさんは当然のように、「返済の大部分は息子が負担してくれる」と思い込んでいました。Aさんは定年後も勤務を続けていましたが、もうすぐ完全リタイアの予定。年金生活で住宅ローンを背負うのは難しく、「メインは働き盛りの息子、サポートとして自分が一部負担する」というのが当然だと考えていたのです。

しかし、息子から返ってきた言葉に、Aさんは愕然としました。

「え、払えないよ。いまは母さんの返済期間でしょ。僕は投資を始めたばかりだし、そっちにお金を使ってるから無理。年金もあるでしょ。がんばってよ」

悪びれもせず、スマホをみながらいう息子。Aさんは耳を疑いました。住宅ローンの返済額は月9万円。一方、Aさんの年金は月18万円。つまり、年金の半分がローン返済に消える計算です。

「ひょっとして、息子は最初からこのつもりで契約していたの?」

夫の死後、女手一つでパートを掛け持ちし、自分のことはすべて後回しにしてきました。息子は大学卒業後も、なかなか一人暮らしを始めず、Aさんはその間の家事の一切を働きながら引き受けてきたのです。Aさんの脳裏に、ボロボロになりながら息子を育て上げた日々が蘇ります。その苦労のすべてが、息子の「投資」という身勝手な理由のために利用され、無残に踏みにじられたように感じました。

信じていた息子に裏切られたという絶望は、Aさんの心の底から冷たい怒りを引きずり出します。この世で最も愛し、守ってきたはずの存在が、いまこの瞬間、最も憎い人間に変わったのです。Aさんはその場に崩れ落ちそうになるのを必死でこらえました。

Aさんは、その後しばらく契約書を何度も読み返しました。そこには、見落としていた現実が書かれていました。主債務者はAさん自身、息子は連帯債務者となっており、当面の返済を代表するのはAさん自身。バトンが息子に引き継がれるのは、Aさんが80歳になってからだったのです。

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