◆類似事件はバンコクでも
さらに、同じタイ国内でも2024年、バンコク市内のクラブで在住日本人の男性が泥酔状態のタイ人女性にわいせつ行為を働き、無理やりタクシーに乗せようとした疑いで逮捕される事件が起きている。こちらはパタヤの事件より若い世代によるケースだが、どちらも日本人による文化・マナーの誤解や認識の甘さが引き金になっている点で共通している。
海外に出ると、日本では厳しく律していたはずの“自分”を解放してしまう。特に東南アジア旅行では「夜遊び」「自由」「非日常」といったイメージが強く、中高年男性の一部は“第二の青春”を求めて行動してしまうこともある。SNS上でも「タイ=夜遊びの街」「男の楽園」といった投稿が散見され、下品な行動のハードルを下げる一因となっている。
現地で働く日本人によれば、じつはタイではセクハラ行為に対する社会的な許容度は非常に厳しくなっており、公共の場での不適切な行為や言動には、即座に警察が介入するケースが多く、観光客や在住者であっても例外ではないという。今やSNSでの情報拡散も早く、社会的制裁を受ける可能性も高い。
たまにタイで日本人旅行者が夜の武勇伝を大声で話しているのを見かけることがある。タイ人同士であれば、身内で冗談交じりにシモネタを話すことはあっても、公共の場では決して口にしない。そのため、日本人旅行者が下品な会話をしている横では、日本語がわかるタイ人が失笑していたりする。
◆敬意を持って楽しいタイ旅行を

今回の事件は単なる“旅行者や在住者の悪ふざけ”では済まされない。文化の違いを理解せず、過去の価値観を引きずったまま海外に出た結果であり、改めて自分たちの振る舞いを考えるきっかけとなるべきだ。
タイは人々の温かさはもちろん、歴史ある文化や自然など、魅力にあふれた素晴らしい国だ。筆者自身もタイの夜遊びの楽しさは十分に知っている。だからこそ、現地の文化やルールを理解し、敬意を持って行動することが求められるだろう。
<文/カワノアユミ>
【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

