◆“似合いすぎる”からこそ起きる違和感
この作風にこそ、Fukaseという存在の高純度の若さが現れているのです。それはミュージシャンとしての表現方法に限った話ではなく、Fukaseという人物像が映し出す、在り方そのものです。
以上を踏まえると、見た目や価値観がかけ離れたカップルだからではなく、むしろその真逆で、見た目も雰囲気も似合い過ぎていることが、Fukaseと沢田京海の違和感の正体となります。
完全にマッチしているからこそ、40歳という数字の事実だけが宙に浮いてしまう。セカオワマジックが起こした、皮肉な消化不良なのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

