◆厨房に入っている夫の頭髪は…
なぜなら、厨房担当の夫は最近、髪の毛が薄くなってきたことに悩み、スキンヘッドにしたばかりだったから。しかも、人件費や材料費などの高騰に対応するため、ここ数か月は夫がワンオペで厨房に立っていたのだ。「私といえば、店や家計を支えるために、店の営業時間以外は息子が経営する小さな会社で経理を担当していたのです。そのため、ここ1年ほどは厨房に立ち入ってもいなかったので、髪の毛が丼に埋もれるように入るはずがありません」
店内にお客さんがいなかったことも手伝い、これまで抑えてきた怒りが爆発。久美子さんは、「うちの厨房はツルピカの主人しか立ち入ってないので、髪の毛が丼の奥に埋もれるはずがありません!」と強気な態度で抗議した。
「勢いに乗って、『これまでのことも、 “いちゃもん”って気づいてますよ!営業妨害として警察や弁護士さんに相談させていただきますね』と毅然とした対応をしたところ、男性客の態度が急変。『あ…あぁっ…こ、これって…ぼ…僕の髪の毛かな…?』と言い出したのです」
◆しどろもどろになった男性客
そして、狼狽えた声で「そうかも…。そんな感じがしてきたぞ…」などと言いながら、「あ、お会計」と、サッとお札を取り出したとか。苛立ちながらも久美子さんがお釣りを渡すと、男性客はスーッと店から出て行き、二度と現れることはなくなったという。「今回は夫がスキンヘッドだからよかったようなものの、あんな言いがかりをつけてくる悪質な人が本当にいることに驚きました。ただ、最初の段階で毅然と対応しなかったことが相手の要求を大きくしてしまった部分もあるのかもと、反省にもつながっています」
久美子さんはそれ以降、普段からなるべく毅然とした対応を心がけているという。このあとカスハラ行為をおこなった男性客がどうなったかは不明だが、ウソがバレて恥ずかしい思いをしないよう、理不尽な行為は慎んでもらいたいものだ。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

