オーバーロードハウスは良株?見分けるための指標
「へぇ〜。そんなもんですか」
2人とも腑に落ちない表情だ。
「まだ、よくわからないんですが、今回はそういう探し方はしなかったので、次回までに、ちょっと頑張ってみます」
信二はそう言いながらも「ただ、1つだけ、2人で見つけた会社があるんです」とカバンの中に手を突っ込む。
「ほほう。何の会社?」
「先週このお店に来る前に行った、オーバーロードハウスって、住宅会社です」現地見学会でもらったオーバーロードハウスのパンフレットを取り出して見せた。
「なるほど」
「昨年、上場したばかりの、まだ小さな会社なんですが、少なくとも僕たちは5000万円ものローンを組もうと真剣に考えた住宅会社なんです。ただ、調べてみると今年に入ってから株価はダラ下がりで……」
エビ銀はノートパソコンを取り出してオーバーロードハウスについて調べ始める。
「ふーん。なかなか、良いんじゃないかな? 実は住宅会社も過去に大化け株が連発したジャンルだ。ローコストビルダーやパワービルダーと呼ばれる会社の中には10倍以上も上昇した株がいくつもあるよ」
「10倍!」
2人は目を丸くした。
「株ってそんなに上がるものなんですか?」
姫奈の質問にエビ銀はさらっと答える。
「そうだよ。数年単位で見たら、5倍、10倍はざらにある」
50年選手のエビ銀にとってはごく当たり前の話だ。
「さて、この会社はどうだろう。良さげな雰囲気はあるけどね……」
何やらデータをいろいろと調べていると、そこへマハ・カラもやってきた。
「うおーっ、やってるね。エビ銀の株式投資講座! 100万円払ってでも受けたい人、いっぱいいるんじゃないかな?」
エビ銀はマハ・カラを気にせず、パソコンの画面に集中している。
「そうだなぁ〜。じゃあ、この銘柄を教材に、もうちょっと株の勉強を進めてみますか?」
2人はこくりとうなずいた。
「まず、いくつか基本を覚えてもらわないといけないね。この株が高いものなのか安いものなのか? そいつを見分けられるようにならないと話にならない。いくら成長している会社の株でも、あまりに高く買いすぎると痛い目にあう。成長株を見つけることが一番重要なんだけど、それと同じくらい、それを高く買いすぎないことが重要なんだ。そのためには、PERとかPBRとか、いろんな指標をチェックする必要がある」
「やっぱ、そうですよね。一から勉強をしないといけないですよね」
自分のお金儲けのためだから、少々の勉強を惜しむつもりはなかった。しかし、いざ、聞いたこともない専門用語が飛び出してくると、やはり躊躇してしまう。
「心配しなくていいよ。中学3年生くらいの国語と数学の知識があれば、誰でも理解できるレベルさ。まずはPERから説明しようか」
これには、マハ・カラもあきれてしまった。
「いや、なんぼ何でも、天下のエビ銀がPERみたいな初歩的なことを教える必要はないよ」
古本コーナーから2冊ほど入門書を取り出してきて、2人に渡した。
「これで、勉強してきてよ。来週、ボクがテストするから」
確かに基本的なことは、入門書かネットで勉強すればよい。エビ銀からは上がる株を探すコツを教えてもらわないともったいない。
「わかりました。えっと、本のお代はいくらでしょうか?」
裏側を見ると、1冊目は450円、2冊目は700円とシールが貼ってある。
「2冊まとめて買ってくれるなら、1000円に負けとくよ」
この大金持ちにとって、値段なんてどうでもいいらしい。
「いつも思うんだけどさ、株の本くらい、お値打ちな買い物はないネ。ここにあるような投資本には大事なことがいっぱい書かれている。ずっと株を続けるのなら、本をたくさん読んで勉強し続けるといいよ。この2冊は日本人が書いた入門書だけど、入門書の次は、アメリカの偉大な投資家の本を読むと良い。ウォーレン・バフェットとか、ピーター・リンチとか。この店にもあるから、もう少し基本を勉強したら必ず読むように」
マハ・カラはさらりと大事なことを教えてくれる。姫奈は持ってきたノートにメモを取りはじめた。あわせて、エビ銀が最初に教えてくれたことも忘れないうちにメモっておく。
・投資に勝つコツ①
アメリカの著名投資家の株の本を買って読む。
・投資に勝つコツ②
身近な趣味や仕事に関連する企業の中から成長株を探す。
・投資に勝つコツ③
成長株を探し出すことが一番大事。それと同じくらい、株を高く買いすぎないことが大事。
「おおーっ、いいネェ。その3つさえ忘れなきゃ、一生勝てる気がするよ」
マハ・カラは勝手にノートを覗き込む。エビ銀もカウンター越しに同じものを見て笑った。
「こういう基本を忘れるから、みんな大損をするのさ」
奥山 月仁
会社員投資家
