麻衣さんが見落としていた、東京移住の“致命的なデメリット”
「新宿や渋谷まで30分くらいで行けたらいいな」
ウキウキで物件を調べ始めた麻衣さん。しかし……
「えっ、ウソ、都内の家賃ってこんなに高いの!?」
麻衣さんが希望する地域の家賃相場は、現在と同様の間取りで月17~18万円ほど、人気エリアで少し良い条件を求めると、あっという間に20万円を超えます。保育料以上に、家賃によって家計が圧迫されそうです。
「ほら、お得じゃないじゃん」
夫は呆れたようになだめます。しかし、麻衣さんも簡単にはあきらめません。
「でも、高校だって無償なのよ……」
「保育料がかからなくてお得なのは最初の3年間だけでしょ。ここに住んでいれば、そのあとは貯金もできるけど、東京に住むとその高い家賃がずっとかかるんだよ」
「そのときはマンションを買えばいいじゃない!」
麻衣さんに“とどめを刺した”衝撃の事実
高騰を続ける東京23区内のマンション価格
不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、東京23区の新築分譲マンション平均価格(2025年8月)は約1億3,800万円でした。一方、神奈川県は約6,500万円です。
「同じ広さ・同じ質」の住まいを実現させるには、約2倍の予算が必要になってしまいます。
(月々の保育料が安くなったとしても、これじゃあなんの意味もない……わざわざいまより高い家賃を払って、いまより狭い部屋に住みたくないし……いつかはマイホームも欲しいけど、都内じゃとても手が届きそうにない……)
「やっぱりや~めた」
スマホをソファーに放り投げた麻衣さんに、夫は肩をすくめていました。
スマホを放り投げて、ふと部屋を見渡した麻衣さん。古いマンションですが、テラスからの眺め、お気に入りのカーテン、夫が組み立てた本棚、少しずつそろってきた赤ちゃんのためのスペース。
「まあ、ここで暮らすのも悪くないか」
支援制度は暮らしを見直すきっかけに
中川夫妻はこの話し合いをきっかけに、いまよりも少し広く、都内へのアクセスも良い横浜市内の賃貸マンションに引っ越しました。
今回紹介したケースのように、保育料無償化をはじめ、さまざまな支援制度を知ることは、暮らしを見直すきっかけにもなります。
その際、家計の収支だけでは見えてこない「暮らしやすさ」や「心のゆとり」といった大切な資産も念頭に、支援制度を自分たちの暮らしに引き寄せながら、上手に活用していきたいものですね。
石川 亜希子
CFP
