◆「正々堂々」が通用しないリアル

「赤・緑」でもポケモンを違法労働させたり転売したりして稼ぐ悪の組織「ロケット団」が登場しましたし、「ブラック・ホワイト」では「ポケモンを人の支配から解放する」をスローガンに活動する「プラズマ団」が暗躍しました。
また、ポケモン世界では、トレーナーとのバトルに勝利すると、名誉と共に賞金をもらえます。
であれば、「ポケモンバトルのルールはどこまで整備されているのだろう?」「審判不在ならば、闇討ちして身ぐるみを剥ぐ犯罪も横行しているのでは?」などと考えが及ぶのもまた自然。
効率よく稼ぐなら、正々堂々と戦うより、不意打ちで相手ポケモンを戦闘不能にしてから脅した方が早いからです。
実際にZAでは、「待ち構えているトレーナーの背後から不意打ちすることでバトルを有利に進められる」と明言されました。
むしろ、「見つかって勝負を仕掛けられると不利になるから、積極的に闇討ちせよ」と奨励されるほど。あまりにもシビアすぎる価値観に、ギャップを抱いた方もいらっしゃるのでは。
◆「面白い」に本気で向き合う
LEGENDSシリーズは、大人の「なんで?」を誤魔化さず、極力リアルな「ポケモンとの付き合い方」を描写した作品群です。ゲームと現実は切り離せ。そう教えられるのが一般的ですが、本当にリアルから切り離されたフィクションは、面白くありません。
フィクションだからこそ、逆説的にリアリティが必要になってくる。『呪術廻戦』では、呪術師たちの発するエネルギーを発電に利用する案が出ました。
『鬼滅の刃』では失われた手足が生えてこないからこそ、どんなに強いキャラクターでも四肢が欠損すれば戦力外になりました。
「上手にウソをつきたいなら、真実の中に混ぜ込むとよい」と聞いたことがあります。面白い作品を作るには、きっと現実を誰よりも深く理解しなくてはならないのでしょう。
「ゲームはゲーム」と完全に切り分けて別物とするのは、「勉強は机の上だけで行うもの」とレッテルを張るようなもの。そして、そういう人に限って、大体成績は振るわないものです。
必要なのは、それぞれの性質や属性で分類し、それらの違いを比較するような学際的な学びの態度でしょう。
「子どもがゲーム漬けで……」と悩まれる親御さんは数多くいらっしゃいますが、ゲームからでも思考を深められるような問を投げかけられるように、ご自身も「ゲームに隠れたリアリティ」について学ばれてみてはいかがでしょうか?
親目線からでしか気付けない「現実味を持たせる描写」を指摘できれば、きっと親子で学べる最高の教材になるはずですよ。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

