
「骨董品・古本・居酒屋『三福』」で、昭和の大投資家「エビ銀」に教わりながら、優良企業の株を見定めた信二・姫奈夫妻。いよいよと意気込み、株を買ってみたものの、早速市場の洗礼を浴びることに……。本稿では、奥山月仁氏の著書『株小説エビ銀 路地裏の大投資家が教えてくれたこと』より、株投資に勝つコツをみていきます。
株の面白さ
ツピッ、ツピッ、ツピッ、ツピッ。シジュウカラの美しい鳴き声が響く。耳を澄ますと、遠くでウグイスも聞こえてきた。
翌週、マハ・カラはテストを用意して待っていた。ごくごく簡単なもので、入門書を理解すれば、誰でも答えられる程度のものである。
「OK。2人ともテストは満点。簡単だろう?」
ただ、こういう基本的なことを覚えると、次の疑問が浮かんでくる。そして、それがわかると、さらにその次の疑問が浮かぶ。こうして、株の面白さにのめり込んでいくのである。早速、姫奈から質問が入った。
「あのう、調べてみたら、オーバーロードハウスはPERが7倍くらいになるんですが、これって安いことになるんでしょうか? この本の通りなら、PER10倍以下なら割安ということになるようなんですが、本には、業界内の比較も重要だって書いてあったので、他のハウスメーカーも調べたら、だいたい同じレベルです。どう判断すればいいか、よくわからないんです」
「そうよね。普通はそうよね。銀ちゃん、どう答える?」
今日はサラ柴も最初から待ち構えていた。
「ほう。他のハウスメーカーとも比較したのかい。偉い!」
エクセルの表がプリントしてあって、その中に8社ほどハウスメーカーや不動産会社の社名が並んでいた。それぞれ株価、PER、PBRが書かれている。信二が調べて作ったものだ。
「なるほど、住宅会社ならPERは7〜12倍といったところか?」
エビ銀が紙を手に取って質問する。
「ところで、姫ちゃんは、実力ある大手ハウスメーカーと、まだ上場したてのこのオーバーロードハウスなら、どっちをより高く評価する?」
姫奈はすぐに答える。
「やっぱり、大手ハウスメーカーだと思います。大手のほうが安心だし、知名度もあるから。実際、調べてみると、大手のほうがPERは高い傾向にあります」
「そうだよな。普通はそう思うよな?」
エビ銀は期待通りの反応に、ニコニコしている。
知名度の高い大手よりも、これから伸びそうな小さな会社
「けど、そのことこそが狙い目なんだ。会社の規模だとか知名度だとか、そんなのはどうでもいい。それよりも、今後、伸びるかどうかが絶対的に重要さ。企業が成長したら、成長した分だけ、株価は上がる。大手は大手で様々な工夫をして再成長を目指しているけど、売上が急増している小さな会社が今後も成長を続けるほうに賭けたほうがより儲けやすい」
エビ銀に乗っかるようにサラ柴が付け足す。
「けど、市場は、売買がしやすい大型株を高く評価して、売買しにくい小さな会社を低く評価する傾向があって、これからガンガン成長しそうな小型株に限って割安に買わせてもらえるってわけ。だから、そのギャップを攻めれば大儲けできるの」
姫奈は嬉しくなった。
「じゃあ、オーバーロードハウスを買えば儲かるってことですか?」
この質問に対してベテラン3人は顔を見合わせた。「うーん」次に何を言おうかと迷っている。
「いえっ、わかっています。最終的には自己判断で投資しなさいってことですよね。有望株かどうかは自分で決める。皆さんからはそのための分析力や判断力のつけ方を教えてもらう。そういうつもりでここにいます」信二がきっぱりと言った。
「おおーっ、ちゃんとわかってるじゃん」マハ・カラが笑う。
「姫ちゃんさ、信ちゃんが今言ったことも超重要。こないだのノートに書いておこうよ」
姫奈はノートを取り出した。表紙には「姫奈の投資ノート エビ銀先生、サラ柴先生、マハ・カラ先生直伝の書」とマジックで書かれてある。
・投資に勝つコツ④
自己判断で投資しなければいけない。そのためには、分析力・判断力を磨かなければならない。
「ヒューッ」マハ・カラが大げさに反応して見せる。
「なんか新鮮だね。これ、良いノートになるよ」
エビ銀もノートを覗き込む。姫奈はその視線を感じながら、思い出したように書き加える。
・投資に勝つコツ⑤
これから伸びそうな小さな会社が狙い目。しかも割安に買える。
