モリタン製菓のライバル社
翌週、信二は、もう1社、気になる会社をパソコンで調べていた。先日、三福に行く前に立ち寄ったドラッグストアのプロテイン売り場で、モリタン製菓のライバル商品を作っていたメイポが気になったのだ。
メイポは、明治時代から続く歴史あるお菓子会社だ。ただ、お菓子だけではなく、最近は免疫力を高める乳酸菌飲料や、脂肪の燃焼を助ける健康補助食品などが大ヒットしている。調べてみると、業績は急拡大しており、株価も2年ほどの間に2倍に上昇していた。
「ねぇ、モリタン製菓を調べたついでに、メイポも調べてるんだけど、こっちもかなり良いよ」
姫奈もパソコンを覗き込む。
「確かにメイポはプロテインもよく売れてるし、ホーネットパワーもすごく売れているの。有酸素運動をする前にこれを飲んでおくと、脂肪を落とすのに効果があるのよ」
「へえ〜、知らなかった」信二は株価についても説明する。
「ただ、株価は既に結構上がってるんだ。1年前と比べて2倍になってる。やっぱ、まだ上がってないモリタン製菓を買うべきかな」
パソコンに映し出された株価チャートを見て、姫奈も呟いた。
「怖いくらい、上がってるね。逆に下がりだしたら、大暴落しそう」
見つけた株の「周辺企業」まで調べることの重要性
結局、迷ったまま、週末を迎えた。
「で、モリタン製菓はいくらで買えた?」エビ銀が聞くと、信二は言いにくそうに答える。
「実はまだ買ってないんです」
「えっ、なんで?」サラ柴が聞く。
「実はあの後、ライバルのメイポについても調べたんです」
「ああ、チョコとかアイスとか作ってる、あのメイポね」
「はい。で、調べてみると、メイポも同じように健康食品で成功していて、海外進出も進めようとしているんです」
「なるほど、それで、どっちにしようか、迷っちゃったってことかしら?」
「はい」サラ柴はエビ銀のほうを見ながら言った。
「これもよくあることよね。良い株を複数見つけてどっちにするか迷うって……」
「そうだね」エビ銀が口を開いた。
「君たち、偉いね。モリタン製菓を見つけただけじゃなくて、さらにそれに関連する企業を調べるというのは、とても大事なことなんだ。良いと思う会社があれば、その周辺企業の中からもっと良い株が見つかることはよくある」
どうやら企業の調べ方は間違っていないようだ。
「思い付きだけで突っ込んでいくんじゃなくて、他と比べることで、間違いなく投資力がついていく。しかも、実際に売られている商品から生の情報を手にして、そこから投資アイデアにつなげるっていうのも重要なことだ。良い探し方ができている。姫ちゃん、このこともノートに書いておくといいよ」
・投資に勝つコツ⑨
何かのきっかけで有望株を見つけることができたなら、その周辺も調べるとよい。もっと良い有望株を見つけられる可能性がある。
・投資に勝つコツ⑩
実際に売られている商品から生の情報を手にすることが大事。
株のプロの発言に左右される、不健全な日本株
「株のプロとか専業トレーダーとかって言っても、ニュースで流れる経済指標や要人の発言とか、力のある投資家が何を買っているか、みたいなことばかりを必死になって追いかけている。実際に企業がどんな商品を売っていて、それが世の中にどういう風に受け入れられているか、みたいなことを、丁寧に調べている人って、むしろ少数派さ」
エビ銀は日本の株式市場の状態をあまり良いとは思っていない。
「もっと生の意見が市場に反映されないと、頑張っている企業のほうだって報われないよ。君たちのような、ごくごく普通に暮らしている人が、そんなごくごく普通の暮らしの中から見つけた、とっておきのお宝株を買うっていうのは、日本経済にとっても良いことなんだ」
姫奈は自分の投資が世の中に役立つことに喜びを感じた。
「それにプロ連中が、あまりに企業以外のことばかりを見ているもんだから、素朴な発想で、素直に企業を評価して株を買って、ただその株を保有し続けるだけで、プロ以上に儲けることができる。君たちはそういう投資家を目指すといいよ」
信二が質問する。
「今回のように、同じ業種で、同じような理由で成長している、良い株を2つ以上同時に見つけた時は、どうするのが良いのでしょう?」
これにはマハ・カラが即答した。
「2つとも買えばいいじゃん。まだ1社しか買ってないんでしょ? 2つ買っても、まだ全部で3社じゃん。目標は5社なんだから」信二は腑に落ちない。
「そうなんですけど……。5社に投資する理由が、分散してリスクを減らしながらも、一方で5社だけに投資先を集中することで高いリターンを目指すっていう、両取りの発想だと思うんです。その場合、同じ業種で、同じ理由で成長している2社なら、リスクがカブるので、どちらか一方に絞ったほうがいいのかなぁと、素人ながらに感じたんです」
