◆横柄な態度が一変
事実を知った隣人の奥さんの態度は180度変わりました。「ある日、急に『ご迷惑をおかけしました』なんて、にこやかに話しかけてくるんです。まさかあの人がこんなに態度を変えるなんて…」と彩乃さんは呆れ返ります。
町内会関係者によれば、隣家の奥さんはとうてい高額な工事費を負担できず、態度を変えるしかなかったそうです。さらにーー
「あれほど手のひらを返したような態度ってあるんですね。少し気味が悪いくらいニコニコ笑いながら私の機嫌をとりにきたり、はみ出した土に関しては『気になさらないでね。私も花が育つのが楽しみだわ……』という感じなんです」
以前とは環境が全く変わった彩乃さんは、再びガーデニングに力を注いだと言います。
「夫にも言われたのですが、本当なら1日でも早く外構工事に着手してもらい、正規の区画に戻してもらいたかったのですが、なんか日々のストレスから解放されてしまい、ついなあなあになっていきました」
◆結末はまさかの転居
結局、隣家の奥さんは家を売却し、家族ともども田舎の鳥取に転居したといいます。どうやら、正式に市からの区画調整要請がきたそうです。彩乃さんは、「正直、平和になったけど、こんな大騒ぎになるとは思いませんでした。でも、これで良かったのかな」と振り返ります。
市の担当者も、「古い土地の境界問題は、想像以上にトラブルを引き起こすことがあります」と注意を呼びかけています。
彩乃さんは今、花壇作りを心から楽しんでいるそうです。「毎日、土に触れるのが本当に楽しいです。やっと自分の庭って感じになりました」と微笑みます。
町内は再び静かな日常を取り戻しました。隣人の転居は予期せぬ形で平和をもたらし、彩乃さんの庭には今、小さな花たちが元気に咲いているそうです。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

