◆最後は自分で立ち上がるほか方法はない
――学生時代の挫折が人生全体に影響を及ぼしているようにみえますが、ご自身の人生を振り返ってどう感じますか。久保田:ありがたいことに、さまざまな人や制度が助けてくれる状況があります。でも、やはり最後は自分で立ち上がるほか方法はないのだろうなと思っています。躓いても、人生は待ったなしで進んでいくんですよね。
私は人とつながる力が極端に弱く、自分の内面の複雑さや面倒くさいところを打ち明けるのがとても苦手でした。人間関係も、何か目に付くと自分から遠ざかってしまうんです。今思うと、どんなに部活や学校の校則が厳しくても、自分を癒やすための自衛的な趣味のひとつでもあればよかったのかもしれません。
けれども私はすべてを真に受けて食らって、そのたびに傷ついていきました。自分だけの余白がなさすぎたのかもしれません。ラグビーを始めたことからすでに、他者(両親)の評価ありきの他人軸ですよね。自分を癒す方法を育てられなかったことが、今の人生に大きく影響しているなぁとは思います。
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誰しも心のなかに面倒な感情を飼っているが、その繊細さに気づかれず、別の値札を貼られてしまう人がいる。そして他人の機微に聡い人ほど、期待された役割を演じる。自分の心を蝕んでいくことに気づきながら。
きっと久保田さんの紆余曲折は、利口な別の誰かならば、いとも容易く解ける程度の難易度なのだろう。けれども一笑に付すことは憚られる。自分でも説明のできない、得体のしれない感情に振り回された経験のある誰かのために、久保田さんが話してくれたのだから。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

