伝統の味・熊本の郷土料理「からし蓮根」●熊本を代表する名物料理「からし蓮根」。そのからし蓮根の老舗『森からし蓮根』の魅力とは?
熊本の代表的な郷土料理として知られる「からし蓮根」。その始まりは今から約400年前、体の弱かった熊本城主を思いやる優しい心から生まれました。
その製法は長く門外不出とされ、一子相伝で受け継がれてきました。その伝統の味と技を、今もなお守り続けているのが、創業140余年の老舗『森からし蓮根』です。
熊本市の中心にそびえる「熊本城」熊本城から車で約5分。古い町並みが残る旧城下町・新町に店を構える『森からし蓮根』。
「からし蓮根」は、今でこそ熊本の名物料理として親しまれていますが、もともとは藩主のための特別な料理でした。
それを一般に広めたのが、考案者・平五郎の子孫である14代目・平次郎です。明治11年に『森からし蓮根』として創業し、庶民も味わえるようにしたことが老舗の始まりでした。
「殿様を助けたい」との優しい思いから生まれた「からし蓮根」
古い町並みも残る旧城下町・新町に店を構える約400年前、体の弱かった肥後藩主・細川忠利公のために、玄宅和尚が「滋養強壮に良い蓮根を使った料理を」と藩の賄い方たちに命じたといいます。その中の一人、森家の先祖・平五郎が考案したのが、今に伝わる「からし蓮根」です。
忠利公はこの「からし蓮根」を食べて元気を取り戻し、大変喜ばれたと伝わります。また、その断面が細川家の家紋「九曜紋」に似ていたことから、特別な料理として長く門外不出とされたそうです。
熊本城主・細川家より褒美として与えられた数々の品が、大切に保管されている(一般非公開)熊本産の麦味噌と和辛子粉を合わせた辛子味噌を茹でた蓮根に詰め、肥後の空豆粉と卵黄を混ぜた衣をまとわせ、菜種油で揚げる。
一子相伝として受け継がれた製法も、明治の世になると人々へと広まり、今では熊本の食卓に欠かせない郷土の味として親しまれています。お正月や祝いの席など、ハレの日には欠かせない存在です。
伝統を守り、時代とともに挑戦し続ける老舗の力
からし蓮根の断面が「九曜紋」に似ていることも、愛された理由の一つとも言われている『森からし蓮根』では、今もなお400年前と変わらぬ製法を守り、全ての工程を手作業で行っています。
一方で、「からし蓮根チップス」など新しい商品開発にも積極的に取り組んでいます。伝統に安住せず、挑戦し続ける姿勢こそ、愛され続ける理由のひとつでしょう。
歴史と伝統を守りながらも、新しいことに挑戦し続けるのも店が続く秘訣なのかもしれないそのままでもおいしいですが、チーズをのせたり、肉で巻いたりといったアレンジもおすすめです。おつまみやオードブルにもぴったりで、日々の食卓でも楽しめます。
からし蓮根のアレンジは無限大。筆者はビールにぴったりのチーズ焼きがお気に入り熊本城主に愛され、地元の人々に親しまれている「からし蓮根」。
店頭はもちろん、お取り寄せでもその味を楽しめます。400年の歴史と人々の思いが息づく伝統の味を、ぜひご家庭で堪能してみてください。
●SHOP INFO
元祖 森からし蓮根
住:熊本県熊本市中央区新町2丁目12-32
TEL:096-351-0001
営:8:00~17:00
休:不定休
https://www.karashirenkon.co.jp/
●著者プロフィール

徳山理恵
地域創生食文化大使1期生・フードアナリスト。熊本生まれ。熊本育ち。現在は大阪と熊本の二拠点生活。食と旅が好きすぎて、本業の傍らライター&カメラマンとしても活躍中。
