
インデックスファンドの積立投資において、保有銘柄をほったらかしにし、株価が暴落した際に不安に駆られて全売却するという事態が散見されます。放置したまま失敗しないためには、保有銘柄に興味を持ち、きちんと理解する姿勢が重要になります。ファンドマネージャーの奥野一成氏が提唱する「オーナー型株式投資」は、保有銘柄をきちんと理解し、信頼して伴走することで自己資産の形成を目指す投資スタイルです。本記事では、そんな「オーナー型株式投資」を実践するときに留意点を紹介します。
相乗効果を使う〜「ほったらかし」はもったいない~
近年、「ほったらかし投資」という言葉をよく耳にします。特にインデックスファンドへの積立投資では、相場を気にせず長期で放っておけば資産が育つという考えが一般的になりつつあります。
確かに合理的な一面もありますが、オーナー型株式投資においては、「ほったらかし」にすることで最も大切な学びを失ってしまうという大きなリスクがあります。それは、「事業を見る眼」を育てる機会を放棄してしまうことに他なりません。この視点は、労働者3.0(※)が持つべき「事業に対する本質的な洞察力」と直結しており、キャリア形成と資産形成を両輪で高めていく鍵(かぎ)でもあるのです。
もうひとつの問題は、「納得感のない投資」は長期で保有し続けることが難しいという点です。
保有企業への理解が浅いまま投資していると、相場が下落したときに不安になり、慌てて売却してしまうリスクが高まります。たとえば、2024年8月5日、日経平均が急落した際、新NISAを利用していた初心者層の中には、投資先企業の内容をよく理解していなかったため、パニックに陥り保有銘柄をすべて売却してしまった人が多数見られました。
一方で、企業内容への理解と納得感を持っていた投資家たちは、むしろ積立を継続し、結果的にその後の回復局面で資産を増やしています。ここに、「投資先企業をしっかり理解しているかどうか」がもたらす決定的な差があるのです。
これは、インデックスファンドへの投資であっても例外ではありません。もちろん、数百社に分散された指数全体を把握することは現実的ではありませんが、代表的な構成銘柄のうち2〜3社について調べるだけでも、投資に対する姿勢が大きく変わります。
たとえば、インデックスに含まれる主要企業のビジネスモデル、競争優位性、財務体質などを知ることで、自分が何に対して資本を託しているのかが具体的に見えてくるのです。このような「部分的な理解」でも、オーナーとしての納得感を育てるには十分であり、投資を「学びの場」に変える第一歩となります。
投資とは、本来「自分が何を信じ、どの未来に賭(か)けているのか」を明らかにする営みです。だからこそ、日々の仕事と投資を切り離すのではなく、むしろ相互に高め合う視座を持つべきでしょう。
オーナー型株式投資は、企業の未来に伴走し、自らの思考力・分析力を磨きながら、資産とキャリアを共に築いていくための最高のフィールドです。学びがあまりにも多く、成長のチャンスに満ちているので「ほったらかし」という選択が極めてもったいない――そうした選択で失った機会を再び得るのは困難です。
たとえインデックス投資であっても、少しの主体性と好奇心をもって向き合うだけで、あなたの投資は「オーナーシップを伴った投資」へと変わっていくはずです。
入金力を上げる〜投資効果の実額を実感するためには?~
オーナー型株式投資のリターンの源泉は、企業のEPS(1株当たり利益)が時間の経過とともに着実に増加していくことにあります。企業の価値創造とともに利益が蓄積され、それを株主として享受するという点に、この投資スタイルの醍醐味(だいごみ)があります。
価格変動に翻弄されるのではなく、企業の利益成長を楽しみながら、資産が静かに増えていく過程を待つ――それがオーナー型株式投資の本質です。
この構造は、いわゆる売買型株式投資とは根本的に異なります。売買型株式投資は、売買の回転率を上げたり、信用取引(レバレッジ)を活用したりすることで、実質的な投資元本を大きくして大きなリスクをとることのできるアプローチです。
一方、オーナー型株式投資は、優れた企業に資本を託し、保有を続けながら企業の内部で起こる価値創造を自分の資産として取り込んでいくという、きわめて長期的かつ地道なアプローチです。ゆえに、「一攫千金(いっかくせんきん)」的なリターンを実額として実感することが難しいといえます。
そのため、リターンを“実額”として実感するには、初期段階における「投資元本」の確保が極めて重要になります。もちろん、20代、30代の資産形成層の若いビジネスパーソンの場合、最初から多額の資本を投じるのが難しいという方のほうが多いのではないでしょうか。
しかしその場合でも、地道に積立を行い、可能な範囲で少しずつでも毎月の入金額を増やしていくことで、雪だるまのように投資元本が大きくなっていきます。オーナー型株式投資は複利の力を味方につける投資です。コツコツと元本を積み上げていくこと自体が、将来の果実の大きさを決定づけます。
さらに言えば、投資元本を増やすための最も本質的な手段は、自己投資によって自らの「稼ぐ力=入金力」を高めることです。すなわち、事業を見る眼を養い、リスクをとって挑戦し、他者と協働しながら価値を創造できる「労働者3.0」へと近づくことが、金融資産を増やす上でも最短のルートとなります。
この相乗効果は、人的資産を深めながら、金融資産に転化していくことが可能です。この知的で自律的な営みこそが、オーナー型株式投資の本質にふさわしい、持続可能な豊かさの築き方そのものなのです。
奥野 一成
投資信託「おおぶね」 ファンドマネージャー
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)
常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
