男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:初デートは高級フレンチ、2回目のデートは居酒屋をチョイス。35歳男性の意図は?
最初は、気が付いていなかった。紗奈からの返事が微妙に遅くなっていたが、返信のスピードは気にしないようにしていた。
しかし、久しぶりに紗奈とのLINEのトークを見て愕然とする。
三日前に送ったLINEは、既読にはなっていたが、それ以降既読スルーになっていたからだ。
「紗奈ちゃん、次はご飯行こうね」
「はい。楽しみにしています」
こう言いながら解散したし、良いムードでことは運んでいた。それなのに、どうして紗奈は既読スルーになってしまったのだろうか…。
Q1:男と二度目のデートで遠征を快諾した理由は?
紗奈と出会ったのは、三ヶ月前に開催されたワイン会がキッカケだった。
白金にある高級タワマンのパーティールームにワインを持ち寄って飲み比べる…というバブリーな会に、僕は久しぶりに参加した。
「義樹、遅いよ」
「ごめん、ちょっと仕事が終わらなくて」
「皆さん、僕の友人で、弁護士の義樹です」
主催者である慶太に紹介され、僕は軽い挨拶をしながらざっと参加者を見渡す。僕を含めて男性5名、女性4名。
“ワイン会”という名目で、みんな出会いを求めて集っていることは明白だった。
遅れて行った僕は、一番端の席に座ったのだが隣にいたのが紗奈だった。綺麗な肌に、整った顔立ち。客室乗務員をしているという紗奈は感じも良く、話も弾んだ。
「そういう感じのシフトなんですね。長時間フライトとか、正直大変じゃないですか?」
「そうなんですよ。あと機内は乾燥するので…」
会話をしているとあっという間にお開きの時間になる。もう少し紗奈と話したいと思った僕は、翌日個別でLINEを送ってみた。
― Yoshiki:昨日はありがとございました。よければ、次は二人で美味しいワインが飲める店へ行きませんか?
すると半日くらいして、紗奈から返事が来た。
― sana:いいですね!ぜひ。
こうして、僕たちのデートが決まった。
◆
「う〜〜〜ん、美味しい♡」
紗奈がグラスをクルクル回しながら、本当に嬉しそうにワインを飲んでいる。
「ですよね。ここ、グラスワインが豊富で。二人で一本開けても良いのですが、いろんな種類を飲めた方がいいかなと思って」
初デートは、ワイン好きの紗奈のために『élevé』を予約した。
「義樹さんは、普段はどの辺りで飲まれているんですか?」
「僕は家が白金なので、あの辺りも多いですし。でも西麻布とか六本木とか…。たまに銀座もあります。紗奈さんは?」
「私もその辺りですかね。あとは恵比寿とか。美味しいお酒とご飯に目がなくて、素敵なレストランがある場所へ行く感じです」
「それ、わかります!いいですよね」
僕自身、食べることが好きなのだが、紗奈も相当な美食家らしい。話を聞けば予約の取れない名店など、色々と店名が上がってきた。
― これは…誰と行っているんだ?
そう思ったけれど、初デートでそんなことを聞くのはスマートではないから、僕は尋ねなかった。
しかし会話の途中で、ふと「気になっているレストラン」の話題になった。
「実は今、軽井沢で一軒行ってみたいお店があって…」
「え、どこですか!実は僕もあるんです」
答え合わせをすると、偶然店名が一致したのだ。
「これはもう…行くしかないですね」
「ですね!嬉しい」
「紗奈さん、いつ空いていますか?僕、車出しますよ」
「いいんですか!?ありがとうございます♡」
こうして、少し先になってしまったけれど、お互いの休みを合わせ、10月頭の土曜日に、軽井沢へ行くことになった。
Q2:二度目のデートがドライブ、プチ遠征デート。正解は?
そして二度目のデート。宣言通り、僕は愛車を出し、紗奈の自宅まで迎えに行く。実は買い替えたばかりの新車で、これを見せることができるのはちょっと嬉しくもあった。
1,000万以上はする高級車だし、女性だって乗りたいはずだ。
案の定、僕の車を見た途端に紗奈は驚きつつもとても喜んでいる。
「義樹さんの車、かっこいいですね…!こんな車に乗れるの、嬉しい」
「実は買い替えたばかりで。結構スピードが出るから、しっかりつかまっていてくださいね」
こうして2シーターの助手席に紗奈を乗せ、僕たちは軽井沢へと出発することになった。
紗奈は、ドライブ中とても楽しそうにしてくれていた。
「結構スピード出るんですね」
「やっぱりこの車の醍醐味は、このエンジン音にありますからね」
「男のロマンって感じですね!」
豪快なスピードとエンジン音。それらにきゃっきゃと喜ぶ紗奈を横目に、僕は心底「やっぱり高級車はモテるな」と実感していた。
それに二人でゆっくり話すことができたから、二度目だったけどドライブデートをして良かったと思う。
「義樹さんって、いつも音楽は何を聞かれるんですか?」
「実は、あまり聞かなくて。うるさいのが苦手なんですよね。何か音楽つけますか?」
「もし何かあれば。でも、うるさいの苦手だったら大丈夫です」
「あと少しなので、行っちゃいましょう」
しかしここで、一つ誤算が生まれてしまった。
「着きました!やっぱり最高ですね、軽井沢は」
約2時間のドライブを終え、晴れやかな気持ちで店へ入ったものの、紗奈は若干しんどそうにしている。
「え?大丈夫ですか?どうしました?」
「ちょっと、車酔いしてしまったみたいで…」
「えー。それは大変だ。とりあえず、水飲みましょう」
行きたいお店が山の上の方にあり、たしかに後半は少しカーブが多かった。
「カーブが多かったですもんね…すみません、話に夢中で気が付かなくて」
「いえいえ。お水飲んだら、だいぶ楽になってきましたので。それよりせっかくなので、楽しみましょう!」
紗奈の言う通り、お水を飲んで安静にしていたら徐々に顔色が良くなってきて、しばらくすると通常に戻った紗奈。
またお互いに行きたかったレストランは噂通り大変美味しく、大満足な食事となった。
「どうしますか?帰りにコーヒーでも買って帰りますか」
「そうですね。せっかくなので、どこか落ち着いて、コーヒー飲んでから帰りましょう」
僕たちは紗奈が行きたいというカフェへ寄り、ゆっくりコーヒーを飲んでから帰路へついた。
「義樹さん、何から何までありがとうございます。車も出してもらった上、ご馳走にもなってしまって…」
「そんな、もちろんですよ。代わりに、またデートして下さい」
「それはいつでも」
こうして、楽しい丸一日がかりのデートが終わった。
しかしそれからお礼のLINEが来たものの、この日を境に紗奈からの返信スピードは急に遅くなり、最後は既読スルーになってしまった。
一体どうして、紗奈は変わってしまったのだろうか。
▶前回:初デートは高級フレンチ、2回目のデートは居酒屋をチョイス。35歳男性の意図は?
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:10月19日 日曜更新予定
女がプチ遠出のデート以来、既読スルーを決めた理由は?

