所得が減った部分を農家に直接払った1990年代欧州の農業政策
そこで出てくるのが、かつて民主党でやっていた『戸別所得補償・直接払い』です。値段が下がった時に、赤字になるようだったら、その差額を直接農家に支払う。市場に価格は任せるけれども、先が見通せる。
1990年代にヨーロッパで始まった農業政策です。東西冷戦が1989年に終わって、WTOができたのが1995年。自由貿易の時代、グローバリズムの時代が始まって、どこの国でも問題になったのが農業です。生産性の低い農業を自由貿易の下に置いたら、自国の農業はつぶれてしまうのではないか。たとえ価格が下がったとしても、農地を維持して農業が続けられるという「直接支払い」、農家の所得が減った部分を直接農家に補填する、というやり方をヨーロッパはとった。
日本は民主党政権(2010年)になってようやくそれを入れた。財務省はこれを嫌がっています。現在も野党はみな主張しているけど、自民党は言わない。
基本法改正で農家にお金を入れる方法を閉ざして八方ふさがり
その財務省の立場が反映されたのが、昨年(2024年)の農業の憲法と言われる食料・農業・農村基本法改正法案でした。改正前は、国が食料の自給率に関する目標を定めることとされていた。でも、この食料自給を食料安全保障という言葉に変えて、「自給」をはずした。コメはほぼ100%自給です。主食だからという理屈ですが、その言葉をはずした。これまで水田農業に予算を投じる根拠は食料自給率の確保だった。それが食料安全保障となると、安全保障というのは、「国内産+輸入』ですよ。この基本法改正には、安定した輸入の確保という項目もあって、米国とかオーストラリアとか同盟国から輸入するものは、輸入であっても安定しているからいいという理屈です。政策体系を変えることによって、直接支払いのように、農家全体にお金を入れるような道を閉ざした、というのが、2024年の法改正でした。
これで直接支払いがやりづらくなった。八方ふさがりになったから、お米券のような愚策が出る。備蓄米の放出とか、どれも愚策だと思いますよ。でもそれしかやりようがない、という隘路に日本の農政は陥っている。
高市政権は財務省をオーバーライドする(乗り越える)と言っているから、もしかしたら、善意にとれば、農政転換があるのかもしれないともとれる。市場価格は市場で決める、とはそういうことです。石破さんや小泉さんがやってきた農政は、私は『亜流』だと思う。農政改革と言う名の素人の改革・石破農政を、私は全く評価していない。どういう背景で鈴木さんが農水大臣になったかわからないが、あの真面目でおとなしい人が石破農政を否定している。だれか後ろ盾がいなければできないはず。
財務省と正面切った農政議論をやらなければいけません。高市首相がそこまでやるんだったら、私は応援したいと思います。