11月4日、大阪・関西万博における海外パビリオンの建設工事費の未払い問題をめぐり、被害を訴える建設会社の代表らとジャーナリストが東京都内で記者会見を開いた。
上位請負業者の「持ち逃げ」「倒産」で建設費未払い…
未払いが発生しているのは11か国(アンゴラ、インド、ウズベキスタン、セルビア、タイ、中国、ドイツ、米国、ポーランド、マルタ、ルーマニア)のパビリオン建設工事費。
建設会社38社が未払いを訴えており、被害額は10億円を超えているという。
問題を取材・調査してきたジャーナリストの西谷文和氏によると、未払いは2次以降の下請けに入っていた会社が工事代金を持ち逃げしたケースと、同じく2次以降の下請けに入っていた会社が倒産したケースとに大別される。
7月にはアンゴラ館の3次下請けをしていた建設会社「一六八(いろは)建設」(大阪市鶴見区)の経理担当者が、工事代金など1億2000万円余りを着服したとして大阪府警に刑事告訴・告発された。8月には建設業法違反容疑で同社の代表宅などが捜索されている。
また、アメリカ館の2次下請けをしていた建設会社「有限会社ネオ・スペース」(東京都足立区)は5月に破産申請し、倒産した。
いずれのケースでも、実際に未払いの被害を受けたのは、3次や4次などの下位請負で工事に携わっていた零細・中小企業だ。
「業者の皆さんは、必死になって(工事を行い)、万博まで間に合わせた。それなのにお金が支払われないのはひどいと思う。
私たちは、国や大阪府、万博協会にとりあえず(未払い建設費の)建て替えを求めているが、現在まで支払われていない」(西谷氏)
「壁の色が違う」と支払い拒否
「株式会社SEIKEN」(千葉県市川市)顧問の岸田宗士郎氏は「被害者の会を発足して国や省庁に申し入れをしてきたが、事実上、放置されている」と訴える。
岸田氏によると、SEIKENはアメリカ館の建設に携わっていたが、元請けとなった「ESグローバル・ジャパン株式会社」(東京都渋谷区、本社はイギリス)から未払い被害を受けているという。
なお、ESグローバルは「支払いは2次下請けのネオ・スペース(前出)を相手に済ませている」という旨の回答をしているとのことだ。
また「事務局J0K(ジェイゼロケイ)株式会社」の高関千尋氏は、「GLイベンツ・ジャパン株式会社」(東京都千代田区、本社はフランス)からの未払い被害を訴える。なお、GLイベンツはマルタ、セルビア、ルーマニア、ドイツの4館の元請けをしている。
西谷氏によると、GLイベンツによる支払い拒否の事例として、ルーマニア館の工事で4億円のうち2億円を支払った後、残りについては「壁の色が違う」「テーブルの形が悪い」などの理由をつけて支払いを拒否したケースがあったという。
「ひとりの職人を一人前に育てるのに、いくらかかると思っているのか。被害に遭った30以上の会社が、経営難に陥っている。我々は社員を、職人を失い、家族からも恨まれている」(高関氏)
「『民民』の問題ではない」吉村・大阪府知事の責任も問われる
「日本維新の会」代表も務める吉村洋文・大阪府知事は、下請け業者への未払い問題は「『民民』の問題」であると発言してきた。これに対し、岸田氏は「万博は国家事業なのだから、『民民』の問題ではない」と語る。
「そもそも期間に無理があったし、建設業法違反も起こっていた。それを無視して強行したことに原因があると思っている」(岸田氏)
万博は通常5年に一度開催されるところ、先のドバイ万博がコロナ禍により1年の延期となったため、大阪万博は準備期間が4年しかなかった。
「さらに、能登半島地震があった際(2024年1月)にも『延期すべき』だという声があったのに、吉村知事は延期せずに突っ走った」(西谷氏)
「この建築を終わらせることができなければ、海外パビリオンがオープンできない。それは私たち日本人にとって『恥』になると思って、開幕までに間に合わせた。
責任は吉村知事にあると思う。彼が『絶対に成功させる』と言った。ならば、未払い問題が発生して困っている人たちに対して、分配を行うべきだ。それなりの覚悟を決めてやってほしい」(高関氏)
また、高関氏は、日本維新の会と連立政権の樹立に合意した自由民主党の高市早苗総裁にも「(建設費を未払いにしている元請け会社との)裁判中の(下請け)会社が引き続き事業ができるように、救済措置としての融資などを早急に行ってほしい」と要望した。
岸田氏は「日本人として、日本を信頼してきたつもりだった。しかし、今回の件で、日本政府が本当に信用できないことに気が付いた。人権侵害を見て見ぬふりする国は、やっぱり、間違っていると思う」と語った。

