「予算内でできるトイレリフォームって?」
「カタログを見ても機能が多すぎて、どんなトイレを選べばいいかわからない」
「将来の介護のことも考えるべき?」
トイレリフォームを検討しはじめたものの、情報が多すぎて決めかねている。そんな方は少なくありません。
そこで今回は、実際にトイレリフォームを経験した方にアンケート調査を実施。
「こんなことに悩んだ!」「こういうことを事前に知っておきたかった!」というリアルな悩みを集め、トイレリフォームに精通した2名の専門家に聞いてみました。
リフォーム経験者が本当に知りたかったことを、プロの視点から詳しく解説していただいたので、ぜひトイレリフォームを検討中の方は参考にしてください。
■今回お話を聞いた専門家
リフォームチョイス(合同会社岩波企画) 業務執行
岩波 清志
さいたま市浦和区を拠点に、水まわりリフォームを中心に手がけています。私自身は営業から施工、管理までを行ってきた経験を活かし、多能工として幅広く対応できることが強みです。ご依頼の規模にかかわらず、最適な提案ができるよう、情報収集とスキルアップに努めています。
バリアフリー工房 代表
内間 大輝
20年以上にわたりバリアフリーリフォームに携わってきた経験を活かして、ご相談や施工を承っています。ケアマネジャーと建築士の両方の資格を持つ私が、身体状況や住まいに合わせたプランをご提案いたします。
トイレリフォームの基礎知識
まずは商品選びから最新機能まで、トイレリフォームの基本的なポイントを伺いました。
トイレ選びは「予算」からはじめよう
トイレの製品がありすぎて、自分に合ったものが選べない…

リフォームチョイス
岩波さん まずはトイレの希望が「お求めやすい価格重視で基本機能のみでいい」のか「多少予算をかけても高機能なもの」なのか、どちらなのかを考えてみましょう。 ■ 予算で変わる機能の違い
| ローグレード 定価10万円程度 |
ハイグレード 定価20万円超 |
|---|---|
| ・基本的な温水洗浄 ・暖房便座 ・フチなし便器 ・除菌機能(ノズル除菌程度) |
・自動開閉機能 ・夜間LED照明 ・便座リフトアップ機能 ・泡のクッション機能 ・除菌機能(鉢内除菌など) |
※搭載機能は一例です。メーカー・商品によって異なります。
岩波さんによると、最近はフチなし便器やトルネード洗浄などが標準化されており、ローグレードでもお掃除はラクにできる商品が多いそうです。
そのため、ハイグレードのみの自動開閉機能や除菌機能などが必要かどうかを考えて、商品を絞っていきます。
トイレの基本タイプを理解しよう
トイレにも一体型や組み合わせ型のような種類があるって聞いたけど、実際どれがいいんだろう?
トイレには大きく分けて3つのタイプがあります。
最近はタンクレスを希望される方が増えていますが、それぞれの型にメリット・デメリットがありますので、ライフスタイルに合わせてしっかり理解した上で選びましょう。
| 組み合わせ型 | 一体型 | タンクレス型 | |
|---|---|---|---|
| イメージ | ![]() |
![]() |
![]() |
| 特徴 | 便器・タンク・便座が別々のパーツで構成される 最も一般的なタイプ |
便器・タンク・便座が一体化された タンク付きタイプ |
タンクがなく、便器と便座が一体化された 最もコンパクトなタイプ |
| 価格 | 安い ⇔ 高い | ||
| メリット | ・価格が安い ・パーツごとの交換が可能 ・異なるメーカーの組み合わせも可能 |
・スタイリッシュ ・継ぎ目が少なく掃除しやすい |
・スタイリッシュ ・空間を広く使える ・タンクがなく掃除しやすい |
| デメリット | ・掃除する箇所が多い ・タンクの圧迫感 |
・故障時は全体交換が必要 ・組み合わせ型より価格が高い |
・故障時は全体交換が必要 ・価格が高い ・一定の水圧が必要 |
画像引用元:株式会社LIXIL

リフォームチョイス
岩波さん 組み合わせ型なら、壊れやすい便座やタンクのみ交換できて経済的です。
10年後の家計の状況、例えば「子どもが成長して教育費がかかりそうだから、故障時は部分的に交換できるものにして出費をおさえられるようにしたい」なども考えてみてください。
プロおすすめのトイレの機能4選
最近のトイレっていろんな機能があって、どれを付けたらいいか悩む…本当に最新機能って必要なの?
最近のトイレにはさまざまな機能があるが故に、自分にとって「必要な機能」と「不要な機能」の見極めに苦労するリフォーム経験者も多いようです。
そこで、今回は数ある機能の中でも、プロがおすすめする機能を4つご紹介いただき、自分に必要な機能の見極め方についてもお聞きしました。
①自動開閉・自動洗浄機能
引用元:株式会社LIXIL
人がトイレに近づくと、便座のフタが自動で開く機能です。用を足したあと自動で洗浄され、トイレから離れると自動で閉まります。

バリアフリー工房
内間さん 動作を減らせる自動開閉や自動洗浄機能は、バリアフリーの観点からもおすすめです。

リフォームチョイス
岩波さん 今は必要性を感じなくても、年齢を重ねると腰を屈めてフタを開閉する動作が辛くなってくることも。逆に、小さいお子様がいる家庭では、トイレを流す習慣を知らずに育つと困るので、あえて機能を外す方もいます。
自分にとって必要かどうかは、5年後、10年後の暮らしを想像することで見極めるのがコツです。 ②人感センサー付きLED照明

引用元:株式会社LIXIL
人を検知すると、便器周りが柔らかなLED照明でほんのりと光る機能です。

リフォームチョイス
岩波さん 夜中にトイレで電気をつけると眩しくて目が覚める…なんてことがなくなります。 ③便座リフトアップ機能

引用元:株式会社LIXIL
便座部分が持ち上がり、普段は掃除しにくい便座と便器の隙間に手が入るようになります。
リフォーム経験者のアンケートでも多かった「掃除のしやすさ」を重視する声。この機能があると日々のお手入れがグッと楽になりますよ。

リフォームチョイス
岩波さん ローグレードのトイレでも掃除しやすく作られていますが、ハイグレードのトイレは、細かい部分のお掃除のしやすさまで行き届いています。 ④除菌機能

引用元:株式会社LIXIL
近年、各メーカーが力を入れているのは除菌機能です。使用後に自動でノズル(お尻を洗う部分)や便器内に除菌効果のあるミストを噴射し、雑菌の繁殖を抑えます。

リフォームチョイス
岩波さん 昔は高級モデルだけの機能でしたが、今では比較的安いグレードでもノズルのみの除菌機能は付いています。
介護・バリアフリー対応のトイレリフォーム
高齢化社会が進む中、トイレのバリアフリー化は多くの家庭にとって避けて通れない課題です。
実際にリフォーム経験者のアンケートでも、次回リフォームするなら気をつけたいポイントとして、
「高齢になった時のことを想定して手すりなどを設置しておきたい」
「介護が必要になっても使いやすい広さのあるトイレにしたい」
といった声が寄せられ、将来を見据えたリフォームへの関心の高さが伺えました。
そこで今回は、福祉リフォームの専門家である内間さんに、安心・安全なトイレづくりのポイントを教えていただきました。
最優先したいのは「転倒しにくい」環境づくり
トイレのバリアフリーリフォームって、まず何から始めたらいいんだろう?

バリアフリー工房
内間さん トイレのバリアフリーリフォームで最優先したいのが、入口の段差を解消して転倒しにくい環境をつくることです。
今すぐバリアフリー化が必要なケースはもちろん、将来に備えてリフォームする場合も、最低限「床のフラット化」は抑えましょう。
ご高齢の方の場合、転倒して入院すると行動に制限がかかることで、食事・入浴・排泄・着替えなど、日々を自立して送るために必要な基本的な動作が難しくなり、体力が落ちて状態が悪化することがあります。
身体機能を維持するためにも、まずは転ばない環境づくりが重要です。
介助・介護の必要度に応じてリフォーム内容を検討する
次に考えたいのは、介助・介護の必要度です。一人で移動してトイレができるか、介助・介護が必要かによって、リフォームの内容が変わります。
■一人で移動できる場合一人で移動やトイレ動作が可能な段階では「予防的なバリアフリー化」が中心です。
①手すり設置

まずは手すりを設置して、立ち座りや後ずさりなど、転倒リスクの高い動作の安全性を高めます。手すりは、使用者の状況に応じて、適切な形状を選ぶことが大切です。
バリアフリー工房内間さん 多くの方は立ち上がる時のことを考えて手すりを設置しますが、座る時の動作も重要です。
踏ん張る力がない方だと、勢いよく座ってしまい、圧迫骨折につながる可能性もあります。
そういったリスクに対しては、横の部分を使って座る動作をサポートできるL字型の手すりがおすすめです。
内間さんによると、トイレに行くまでの曲がり角などでふらついて転倒する方も多いため、トイレ内だけでなく、トイレに行くまでの廊下にも手すりを設置することがおすすめだそうです。
②扉の交換

また、扉の形状も重要です。
外開きだと、万が一トイレ内で倒れた場合も外から救助がしやすくなりますので、扉の開け方を変更することもバリアフリーリフォームのひとつです。
ほかにも、開き戸を後ずさりしながら開ける動作は転倒リスクが高いので、手すりでの補助や引き戸への変更を検討します。

バリアフリー工房
内間さん 省スペースで開けられる「機能折れ戸」を提案することもあります。 ■介助が必要な場合
一人での移動が難しく、介助・介護が必要になった段階では、「介助者の負担軽減・ケガ防止」も重要な視点となります。
そのため、介助者が入るスペースを確保するリフォームが必要です。
①トイレ空間の拡張

理想的なトイレの広さは、幅90cm、奥行き170cm以上。便器が約65〜80cmなので、その前方に90cmほどのスペースがあれば、車椅子にも対応でき、介助者が安全に支援できます。
また、ご家庭によっては間仕切り壁を取り払って、洗面所とトイレを一体化することも。そうすることで、扉を2回開ける無駄な動作を省くことができ、利用しやすくなります。

バリアフリー工房
内間さん 単にスペースを広くすればいいというものでなく、介助者が無理な体勢にならないスペースの取り方が重要です。
スペースを正しく確保できないと、変な体勢でのサポートになり、介助者自身が腰や膝を痛めてしまうこともあります。
②側面アプローチへの変更

トイレの入口から便器までの移動方法には、主に「側面アプローチ」と「正面アプローチ」があります。
内間さんによると、トイレをバリアフリー化するなら側面アプローチに変更することが望ましいそう。

バリアフリー工房
内間さん 側面アプローチは横から便器に近づき、90度回転して座る方法です。正面アプローチは正面から入って180度回転して座る方法で、マンションに多いパターンです。
介護が必要な方にとっては、トイレに入った後に180度体の向きを変えるのは難しいので、できれば90度の回転で済む側面アプローチが望ましく、変更可能であれば積極的にご提案させていただいています。 なるほど!内間さん、詳しく教えていただきありがとうございます!
ちなみに、今は介護が必要な状態ではありませんが、将来を見据えて押さえておきたいポイントはありますか?

バリアフリー工房
内間さん 冒頭でお伝えした段差の解消以外でお伝えすると、将来のことを考えてバリアフリーリフォームするならトイレのスペースをできるだけ広く確保しておくことがおすすめです!
間取り変更は比較的大規模なリフォームになるので、退職後のタイミングで合わせて検討してみてもよいでしょう。
マンションのバリアフリーリフォームには制約がある
マンションでもバリアフリーリフォームはできるのかな…

バリアフリー工房
内間さん 可能です!
金銭的に余裕があれば、収納などをトイレに取り込む形でトイレ空間を拡張し、側方アプローチになるようにする、引き戸にするなどのリフォームをご提案していますが、構造面や予算面で難しい場合は、できる範囲で最大限工夫できるような方法をご提案させていただいています。
マンションだと戸建てと比べてスペースに制約があるため、拡張するためのスペースを設けるのはハードルが高い場合が多いと語る内間さん。
普段ご相談をいただいた際は、お客様の状況に合わせて以下のような工事をご提案しているそうです。
開き戸を内開き→外開きに変更する
手すりの位置や形状を工夫して、限られたスペースでも安全性を高める
自動洗浄や人感センサー式照明など、動作の負担が減るような機能をつける
マンションだからと諦めず、まずは専門家に相談を。構造や配管の位置を確認した上で、最適なプランを提案してもらいましょう。




