サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No57となる今回は、本誌No144に登場した『ウィルズ・デリ』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

*本誌で「ルーベンスサンド」と紹介したサンドイッチは、正しい名称は「ルーベンサンド」でした。ここにお詫びして、訂正させていただきます。 本web連載では「ルーベンサンド」と記載しております。
サンドイッチを日々食べ歩いていると。
たまにとても赤身の肉が食べたくなる。というのも私は、基本的に1日2食で、その2食とは、ほとんどの場合、朝と昼だ。朝ごはんにもしお肉を食べるとしたらハムくらいだし、だいたい動物性タンパク質は、卵か乳製品で摂ることが圧倒的に多い。そしてサンドイッチの具材として赤身肉が用いられている率は、かなり低いと思う。フランスはシャルキュトリーの文化が根づいているゆえ、ハムやドライソーセージなどの豚肉加工品はサンドイッチの具材として最もスタンダードだ。それに並ぶくらい、チキンサンドも存在する。もしかしたら、豚肉以上に見かけるかもしれない。コストの面もさることながら、宗教を問わず誰でも食べられる点においても、需要が高いのだろう。おそらく、そんなわけで、サンドイッチのメニューに牛肉を見つけると、お! とアンテナが反応する。

『ウィルズ・デリ』に気付いたときは、一気に心がニューヨークへ飛んだ。
この夏は、ある仕事をするにあたり、初めてニューヨークを訪れた30年前の記憶を幾度となく手繰っていた。そこへ近しい友人が出張に行くと聞いたところで、いつもチーズを買いに行く店の帰り道に、ふと「PASTRAMI」の文字が目に入ったのだ。あれ? このお店いつからここにあったのだろう?と思いながら近づいて、窓に貼られたメニューを見たら、サンドイッチが10種類。最初に掲げられた「ホットパストラミサンド」は5種類が並んでいる(正確にはそのうち一つは、パストラミではなくコーンド・ビーフ)。窓にある「生産者」の表記にも、ぐんと気持ちが高まった。頭の中に、ニューヨークに行けば必ず食べるパストラミサンドが浮かんだ。



