いつまでも輝く女性に ranune
文筆家・伊藤亜和さんが手放せない大切な一冊、忘れられないフレーズ。『文化の脱走兵』より。

文筆家・伊藤亜和さんが手放せない大切な一冊、忘れられないフレーズ。『文化の脱走兵』より。


自分を主語に世界を語る、迎合しない姿勢に惹かれた。

ロシア文学者の奈倉さんとお会いしたとき、自分の言葉を出すまでにいくらでも時間を使う人だったのが印象的でした。話の中で引っかかったところは見逃さないし、相手に迎合してヘラヘラしない。このエッセイ集には、彼女が長らく関わってきたロシアの状況について、実際に触れた人にしかわからないことがたくさん書かれています。どれもこういう人がいて、こんな笑い方をして、こう話した、という実体験を通した、身に沁みるような言葉です。私は時々余裕がなくて、対話の間を恐れて思ってもいないことを喋ったり、自覚なく大きな主語を使ってウケを狙ってしまうことがあります。あくまで自分自身を主語に語る、奈倉さんの言葉に込められた確かさと一種の頑なさを、すごく貴重に感じるのです。

『文化の脱走兵』著 奈倉有里 (講談社)

伊藤亜和 Awa ItoSelector

文筆家。学習院大学文学部フランス語圏文化学科卒業。noteに掲載した「パパと私」がXでジェーン・スー、糸井重里らの目に留まり注目を集める。著書に『存在の耐えられない愛おしさ』『アワヨンベは大丈夫』ほか。

illustration : Shapre text : Azumi Kubota

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