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第三の居場所づくりに大切なこと

“苦しまないで済む不登校”を社会全体でつくっていく

――文部科学省の2023年度の調査で、不登校児童が過去最多の34万人を超えました。この状況をどのように受け止めていますか。

木村:学校や家で居場所がないと感じる子どもが増えているのは事実ですが、時代の変化も大きいのではないでしょうか。世間の理解が進んで、昔は我慢していた子どもたちも、柔軟な選択ができるようになったのだと思います。

渡辺:昔は不登校が目の敵にされていました。「子どもは学校に行くのが仕事だから、それを拒否するのは悪いこと」というイメージがありましたが、芸能人やインフルエンサーが不登校だったことを打ち明けるような発信も増えて、周囲の理解が広がってきています。「自分だけじゃないんだ」と、救われる子どもも多いのではないでしょうか。

木村:ただ、単に「学校は行かなくてもいい」という風潮には疑問もあります。誰かがそう言っても、その先どうなるかは誰も保証してくれません。

不登校になる子どもの悩みは千差万別で、正解はありません。だからこそ、一人一人に向き合って親や子ども、学校や社会が一丸となって考え続けるべき問題だと思います。周囲の大人は「行かなくていい」と言うだけでなく、その子らしく生きるために何ができるのかも考えてほしいと思っています。

渡辺:この先、どんなに不登校の課題が社会に認知されたとしても、「不登校はいいこと」という認識にはならないと思うんですよ。だから、“苦しまないで済む不登校”という選択肢を用意してあげられればいいと思っています。

不登校は「たまたま今そういう状態」なので、当事者には絶望感を抱えず、今何が楽しいか、心地いいかを優先して過ごしてほしいです。

――「みんなのお家すまいる」は学校や地域とどのように連携しているのでしょう。

渡辺:現在は諏訪市とも協定を結び、行政とも連携して密にコミュニケーションをとっています。行政の方が学校側にも進言してくれるなど良好な関係を築けていますね。学校ではできないことを学べる第三の居場所として認めてくれているので、それはすごくいいことだなと感じます。

木村:諏訪市と周辺地域は親の会のネットワークも活発で、フリースクール含めて24団体が活動しています。相互に受け入れ体制も整っているので、諏訪市に住む親御さんが「地元の諏訪市で知り合いに会うのはちょっと……」といったときに、お隣の茅野市の施設に行くこともできるんです。官民連携でそうしたコミュニティーが多数あるのはこの地域ならではかもしれません。

――「みんなのお家すまいる」の今後の展望を教えてください。

木村:不登校の子どもたちや子どもを持つ親に向けて、今後もこの居場所を維持できればいいなと思っています。数年前までは学校と民間の居場所などが連携して一緒に話をするなんてあり得なかったんですが、学校がカバーできない子どもたちがいる以上、今後の不登校支援においては官民の連携が不可欠になってきます。国や企業とも協力しつつ、支援策を拡充しながら今後もより良いアプローチを続けていければと思っています。

渡辺:15年以上この支援活動を続けてきて、将来何があってもこの場所だけは守り抜きたいと考えています。「親の会」を新たに始めたいという相談も寄せられており、そうした方々へのアドバイスなども積極的に行っています。「みんなのお家すまいる」を卒業した子どもや親たちが今度はこの場所を支えたいと言ってくれることも増え、最近ようやく手応えを感じられるようになってきました。

後継者不足の不安もありますし資金も不足しているのですが、ここが本当に大切な場所なんだということが地域に根付いていくとうれしいです。活動を支えてくれる子どもたちが増えることは私の希望でもあり信じている部分でもあるので、うまくバトンを回し続けたいですね。

不登校に悩む人たちのために、私たち一人一人ができること

最後にお二人に不登校に悩む人たちのために、私たち一人一人ができることを伺いました。

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