うなぎの寝床のように狭く細長い形状の物件や、築年数が非常に古い物件に住む若者たちは、いつの時代もメディアで取り上げられてきたが、近頃は“狭小物件”などを紹介する内見動画がSNSでも人気コンテンツである。物価高に直面する首都圏での生活環境の変化や経済事情を背景に、ひと昔前よりもかなり現実的な選択肢となっているようだ。
しかし、リアルな住み心地などは当事者にしかわからないことも多い。“そこに住む理由”には、人生観までも映し出されるはず。

◆5年前に上京、成増の“激安アパート”から始まったフルコミ人生
――フルコミっくん(以下、フルコミ)さんは、SNSのアカウント名通り業務委託というかたちで不動産営業のお仕事などをされているそうですね。
フルコミ:一都三県を中心に賃貸業や、不動産投資家さんの不動産売買の仲介などをやっています。私自身もアパートなどの投資物件を所有しています。
――不動産業界的に狭小物件って、やっぱり流行っているんでしょうか。
フルコミ:狭小をウリにする物件は増えていて、入居者も入っていますね。ちゃんと需要もあるようで、とくに東京で一人暮らしを始める人の選択肢にはなっているのかなと。
――フルコミさんは今年おいくつですか?
フルコミ:平成7年生まれの30歳です。地元・熊本の大学を卒業して、3年間は福岡の不動産会社に勤務していました。22歳で一人暮らしを始めて、福岡では1LDKの部屋に住んでいましたが、5年ほど前に上京してからは基本的にずっと狭小です。
――心機一転、上京したのはどんな考えがあったんでしょうか。
フルコミ:東京でお金を稼ぎたいなと(笑)。もともと学生時代の就活でも給与面に魅力を感じ、不動産会社に就職したところもあるので。固定給ゼロの働き方になって、少しでも固定費を抑えたい考えもあり、狭小物件に住み始めました。
――なるほど。上京して最初はどんな部屋に?
フルコミ:成増駅(板橋区)から徒歩20分ほどの狭小物件に住んでいました。初期費用1万円で入居者を募集しているアパートのオーナーさんと、「ジモティ」でマッチングしまして。
――「ジモティ」って賃貸物件もやり取りしているんですね。
フルコミ:ただ、夜逃げを繰り返しているような入居者さんも多く、被害に遭っているオーナーさんもけっこう少なくないですけどね。僕自身は狭小住宅に住むことなどに対する抵抗感は全くなかったです。
◆9万円で神楽坂に住める“ハイスペック狭小”
フルコミ:「ジモティ」で借りた部屋を2年で退去してから、3〜4ヶ月ほどホテル暮らしをしていたこともあります。当時、コロナ禍で一泊3000円とかだったので。
――そんな時期もありましたね。
フルコミ:その次が都営大江戸線・新御徒町駅から徒歩1分の狭小RCで、約11平米の部屋へ引っ越し、そこも丸2年住みました。その後、神楽坂徒歩2分・12平米の賃貸へ再び移って現在に至ります。
――わりと短期間で転々としていますが、それぞれ家賃はどんな感じですか?
フルコミ:成増が築10年の木造で4万5000円。新御徒町が7万2000円で、いま住んでいる神楽坂は9万円です。職業柄、いろんな街に住んでみたくて、2年で生活エリアを変えるように意識してきました。
――好立地とはいえ、狭小というわりには、そこそこの家賃だなと正直思ってしまいました。
フルコミ:新御徒町と神楽坂の部屋は、狭小に特化したA社がオーナーの集合住宅で、“ハイスペック狭小”という感じですね。いま住んでいる神楽坂の部屋は3点ユニットタイプで、1口のIHコンロの下に埋め込み式のドラム式洗濯乾燥機が備え付けられています。
――築浅の狭小RC物件で有名な不動産会社なんですね。
フルコミ:外観も内装も今っぽいオシャレなデザインやつくりで、都心の駅近に住みたいけど、高い家賃は払えないという若者などに人気です。風呂・トイレなどの水回りがガラス張りで、なるべく狭さを感じさせない工夫も施されています。

