
著書『韓国ドラマ沼にハマってみたら』で」、韓国作品への思いを綴っている角田さん。
多くの作品を観ながら、ファン・ジョンミンの魅力を知ったという話をお聞きします。
ゲスト
角田光代さん
1967年、神奈川県生まれ。1990年に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞してデビュー。2005年に『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞を受賞し、小説の映像化も多数。近著に『方舟を燃やす』(新潮社)や『韓国ドラマ沼にハマってみたら』(筑摩書房)がある。
韓国ドラマ・映画にこの人あり!ファン・ジョンミンとは?
1970年生まれ。90年に『将軍の息子』で俳優デビュー後、映画『新しき世界』や『国際市場で逢いましょう『』ベテラン』など数々の話題作に出演。
『ハッシュ~沈黙注意報~』や『ナルコの神』などのドラマや舞台『マクベス』などでも活躍。
不倫する弁護士や破天荒な熱血刑事、悪徳市長など幅広い役柄をこなす。
『ソウルの春』では特殊メイクで劇的な変身を遂げ、新たな独裁者としてクーデターを決行するチョン・ドゥグァン保安司令官を怪演して話題に。
写真:YONHAP NEWS/アフロ

『ソウルの春』
1979年12月12日に韓国・ソウルで発生した粛軍クーデターを題材に、反乱軍と鎮圧軍の9時間の攻防を一部フィクションを交えながら描いた作品。繰り返される軍事クーデターと、そのたびに踏みにじられてきた民主主義という韓国の現代史を知ることができる。
最初から華やかではなかった俳優人生を思うと泣けてきます
ワタナベさん(以下W):今日は、ずっとお会いしたかった作家の角田光代さんにお越しいただきました!
角田さん(以下K):韓国ドラマについて話す機会は意外と少ないので、うれしいです。
W:角田さんが韓国ドラマを観始めたきっかけはなんですか?
K:コロナ禍で家にいる時間が増えて『愛の不時着』を観たことです。
W:たくさんの作品をご覧になっていますが、俳優の名前が覚えられない、と。演技がうますぎて、同一人物に見えないというのがとてもよくわかります。
K:そうなんですよ。え、同じ俳優さんだったの? と思うことばかりです。
W:そんななかでも、角田さんが覚えていて好きな俳優はどなたですか?
K:ファン・ジョンミンです。いい役も悪い役もやって、それがすごく突き抜けているし、善か悪かまったくわからない役もあるし。
W:映画の『ソウルの春』もすごかったですね。威圧感があって憎たらしい役でした。
K:本当に。特に立ちションのシーン。あれだけで、あいつがどんな人物かが伝わってくるのがすごかったです。
W:一方で『国際市場で逢いましょう』は、また違った役でしたね。
K:学がなくてお人好しで騙されちゃって、という人物でした。そういう人間くさい役もまたすばらしいですよね。『哭声/コクソン』で演じた祈祷師は、うさん臭くて善か悪かまったくわからない役柄でしたね。
W:そういう幅広い演技、どんな役も演じられるところを魅力に感じているのですね。
K:そうなんです。『人質 韓国トップスター誘拐事件』という映画では、ファン・ジョンミンが、ファン・ジョンミン自身を演じています。本人役で誘拐されるというお話。そのなかで半生が語られるのですが、訛りが強くて顔も無骨でじゃがいも俳優といわれて、それでもがんばって訛りを直してここまで来た、と。それだけで感動して泣けてしまって。最初から華やかな人ではなかったんだな、と。
W:聞いているだけで泣けてくる……。今日はファン・ジョンミンがよく演じる警察の出前で登場する「タンスユク」を作りました。韓国の酢豚です。召し上がってください。
K:わ〜。タレはどうしたらいいですか?
W:韓国では「かける派」と「つける派」に分かれて論争になるらしいです(笑)。

K:おもしろい! 半分かけますね。
W:ちなみに角田さんがここまでハマる韓国作品の魅力ってどういうところですか?
K:根底に人間を信じたいという気持ちを感じるところです。生きる姿勢として、シンプルに人間って絶対に信じられるものがあるものなんだ、と。そこが好きです。
W:人間愛を感じる作品が多いですよね。「一緒にご飯食べよう」ってよく言うところとかにも表れている気がします。
K:そうですよね。食べるシーンの話もしたいです。お料理のこととか。
W:またぜひお会いしましょう!

