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お金があれば「FIRE後は自由」になれる…はもはや幻想?自由も幸せもすり抜けていく〈早期リタイア〉の落とし穴

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オーナー型株式投資は企業の新陳代謝を促す

企業の利益は本質的には「顧客・社会の課題発見・解決の対価」であり、すなわち、それこそが企業の存在意義なのです。だとすると、その逆もまたしかり、顧客や社会に対して付加価値を提供できない、あるいは社会の変化に適応できず付加価値を提供し続けることができなくなった企業は、市場から退場するべきだという冷徹な現実を含んでいます。

この考え方は一見厳しいように感じられますが、社会全体の新陳代謝を促進し、社会全体を発展させる重要な仕組みでもあります。

たとえば、20 世紀後半において一世を風靡(ふうび)したフィルムカメラ産業を考えてみましょう。コダックはその代表例であり、高品質なフィルムやカメラを提供することで、多くの顧客に価値をもたらしました。

しかし、デジタル技術の進展とそれに伴う顧客ニーズの変化に対応できず、従来の事業モデルに固執した結果、コダックは一時的に破綻(はたん)を経験しました。この事例は、企業が時代の変化に適応し、社会に新たな価値を提供し続けることができなければ、その存続が難しいことを物語っています。

経済における「新陳代謝」は、新たなプレイヤーや技術革新に適応できない古い企業――いわば“恐竜”を市場から駆逐するプロセスです。日本では、長年にわたる超低金利と政府・金融機関の支援により、本来であれば市場から退場すべき企業、いわゆる「ゾンビ企業」が温存されてきました。その結果、経済全体の生産性を引き下げる一因となってきたのです。

しかし、いま日本でもようやく金利上昇の兆しが見え始めており、これがゾンビ企業の退場を促す契機となる可能性があります。安価な資金に依存して延命してきた企業にとって、資金調達コストの上昇は経営の持続性を直撃し、新陳代謝のプロセスを加速させることになるでしょう。

冷徹な側面を持つこの市場の淘汰(とうた)プロセスは、企業経営者にとって重要な教訓を提供します。それは、現状に甘んじるのではなく、常に顧客や社会の変化を洞察し、それに応じた価値提供を進化させる必要があるということです。逆に言えば、企業が自らの価値提供の本質を見失い、社会の中での役割を果たせなくなったとき、退場するのは当然の結果ともいえます。

これはダーウィンが唱えた「自然選択」と似ていますよね。ただ企業経営者は「意図的に」「主体的に」イノベーションによる進化を引き起こすことができるという点が生物学的な進化論との決定的に大きな違いです。

生物学的な「自然選択」には生き残る生物学的な「種」に特段の意図は存在しませんが、企業の「自然選択」には経営者など企業活動に関わるビジネスパーソンの主体的な意図、価値観や哲学、戦略が大いに作用するのです。物理的移動技術、情報通信技術の発達によって変化のスピードが格段に速まった現代において、進化を引き起こす経営者、組織の重要性が生き残るうえでますます重要になってきていると言えます。

このような、顧客や社会に付加価値を提供し続けることができる企業が生き残り、提供できない企業が退場するという冷徹な仕組みは、投資家であるあなたにとっても他人事(ひとごと)ではありません。見極めを誤れば、あなたの資本は淘汰される側の企業に吸い取られてしまいます。

だからこそ、どの企業が顧客と社会の課題を解決し続けられるのか、どの企業が競争優位を保てるのか、冷静な分析と洞察が求められるのです。そして、あなたが冷徹に判断することが、あなたの金融資産を守ると同時に、社会にとっても新陳代謝となって結果的に世の中を良くすることに繫がるのです。
 


奥野 一成
投資信託「おおぶね」 ファンドマネージャー
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)
常務取締役兼最高投資責任者(CIO)

 

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