ロジェ・ヴィヴィエ

ロジェ・ヴィヴィエの新しい本社での展示会。今回はメゾンのアイコン「ベル ヴィヴィエ」の誕生60周年にふさわしい華やかな展示会でした。「ベル ヴィヴィエ」といえば、ムッシュ・ヴィヴィエが1965年にデザインし、67年のフランス映画「昼顔」で、主演のカトリーヌ・ドヌーヴがはいたことで有名になった靴。それが、クリエイティブディレクターのゲラルド・フェローニによって再解釈された最新作が展示されていました。



また、これらの靴を技術的に支える職人さんたちの仕事の様子も見ることができました。



今回は新しいものだけでなく、ロジェ・ヴィヴィエの歴史を彩ってきた靴の数々も展示されていました。それらを見ると、ロジェ・ヴィヴィエというブランドがいかに独創的であったかもわかる貴重な機会でした。
ヨウジヤマモト
今回も会場はパリ市庁舎。座席には1枚のカードが置いてありました。

「ヨウジヤマモトは、画面ではなく自らの目でプレゼンテーションを体験し、今この瞬間に集中するよう勧めます。その瞬間、動き、そして衣服があなたに語りかけるままに——それらは単にデジタル記録されるためではなく、五感で感じ取るために存在しているのです」と英語で書いてありました。じっくりと新作を見るよりも、スマホで写真や動画を撮ることばかりに集中することへの皮肉でしょうか。


今回のテーマは「日本、クチュールへの旅路」。さっと見た時にはシンプルに見えるデザインも、その過程では実に複雑な作りや作業を行っています。薄い布が体をやさしく包むように覆ったり、布を結んで形作ったりする服。布の端をほどいて作っていった細いフリンジなど、繊細さと大胆さが同居しています。ふと、過去に山本耀司さんが語った「布は生き物のようなもので、布を手にした時の重さや軽さ、垂れる感じや落ち感で考える。布がどうなりたがっているかを自ら教えてくれる」という言葉が浮かんできました。



作品の中に英語の手紙のようなものがプリントされた服がありました。9月4日に91歳で亡くなったイタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ氏への追悼の意味が込められていました。この手紙はアルマーニ氏の50周年記念のショーへの招待状。背中にはアルマーニ氏の作品。


最後の服は黒のジャケットに、バッスルスタイルのような真っ赤なスカート。ニック・ナイトが撮影した写真を思い出しました。
山本さんの服作りは、西洋のモードへの挑戦でもありました。そのモードの頂点に位置するオートクチュール。今回のショーを見ていると、挑戦ではなく、融合のように見えました。
ショーの間、スタジオジブリの作品「おもひでぽろぽろ」や「天空の城ラピュタ」のほか、秋山雅史の「千の風にのって」などの曲をカバーした山本さんの歌声が流れる中、多くの人たちはいつのまにかスマホを置いてランウェイを見つめていました。私も、です。
text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)
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