いつまでも輝く女性に ranune
AIでむしろ生産性が低下…見た目はよくても中身がない「質の悪い制作物が量産される」問題の対処法

AIでむしろ生産性が低下…見た目はよくても中身がない「質の悪い制作物が量産される」問題の対処法

◆AIを使いつつ「チェックポイント」を作る

僕が思うに、この問題の解決策は「AIを使うか、使わないか」というゼロかイチかで考えるのをやめることです。AIの利用を段階的に捉え、制作プロセスの中には人間によるチェックポイントを設けるべきだと思います。

例えば、部下がAIを使ってアウトプットを作成する際に、「文脈を正しく与えたか?」「過去のデータをインプットして教育したか?」といったチェック項目を設け、それをクリアしてからマネージャーに提出する。これは、機械学習の分野で「ヒューマン・イン・ザ・ループ」(自動化システムに人間が意図的に関与して連携して物事を進めるアプローチ)と呼ばれる考え方です。

ほかにも、例えば5分の3くらいまではAIに作らせて、そこで一度マネージャーと方向性を確認する方法も有効です。

例えば僕の所属先では、部下の人が「AIでここまで書いたんですが、さらにクオリティを上げるにはどうすればいいですか?」とマネージャーに聞いて、マネージャーが「導入はAIでいいけど、ここから先は自分で書いたほうが感情が伝わるんじゃない?」といった会話を耳にすることがあります。

データの傾向分析などはAI任せでもいいですが、「これが言いたい」という力強いメッセージ部分は人間が書く。そうした使い分けが重要だと思います。このような仕組みがあれば、マネージャーが全直しするような事態を避けつつ、部下自身がAIへの期待値を適切に設定し、より自分もコミットメントを増やしてアウトプットの質を高めることができます。

◆AIと人間を「橋渡し」する人材の重要性

もう一つの解決策は、AIと使い方をよく知らない人の間に、「橋渡しをする人」を育てることです。

アメリカで働く前のことですが、僕が働く会社にマイクロソフトのエバンジェリストの人が来社して「Outlookの本当の使い方」というレクチャーをしてくれたことがありました。Outlookは毎日使っているツールですが、それでも専門家からコツを教わると「こんな使い方ができるのか!」と目から鱗が落ちるような発見がありました。

AIに関しても同様に、使い方を“翻訳”して仕事の成果に繋げるエバンジェリストのような存在が、これからますます重要になってくるはずです。

ツール自体は素晴らしくても、それを使う側の準備やサポート体制によって成果は大きく変わります。こうした「橋渡しをする人」は、なにも外注せずとも社内から立ち上がってくると思います。社内でAI活用が好きで得意になる人が生まれて、その人が自発的にチームメンバーに教えたり、部署をまたいで活用方法をシェアしていく。

そういう人を会社として潰さないのが大事だし、「ちょっと俺うまく使えてるかも」と思ったら、どんどん声を挙げるべき。日本のスタートアップでもアメリカの巨大テック企業でも、これから活躍するのはそんな気概を持つ人材だと思います。

<構成/秋山純一郎 写真提供/福原たまねぎ>

【福原たまねぎ】
米GAFAMでプロダクト・マネージャーとして勤務。ワシントン大学MBAメンター(キャリア・アドバイザー)。大学卒業後にベンチャー企業を経て2016年に外資系IT企業の日本支社に入社。2022年にアメリカ本社に転籍し現職。noteでは仕事術やキャリア論など記事を多数発表。X:@fukutamanegi
配信元: 日刊SPA!

提供元

プロフィール画像

日刊SPA!

日刊SPA!は、扶桑社から発行する週刊誌「週刊SPA!」が運営するニュースサイトです。雑誌との連動はもちろん、Webオリジナルの記事を毎日配信中です。ビジネスマンが気になる情報を網羅!エンタメ・ライフ・仕事・恋愛・お金・カーライフ…。ビジネスタイム、プライベートタイムで話したくなる話題が充実!

あなたにおすすめ