3.アイリストの仕事

3-1.アイリストの仕事内容
アイリストの仕事は、まつ毛をケアすることによってお客さんの目元を美しくすることです。そのためにおこなう業務について、具体的な内容を紹介します。
■まつ毛エクステンション
まつ毛エクステンションは、地まつ毛に人工のまつ毛を接着剤(グルー)で植毛して、ボリュームアップさせたり、長さを出したりする技術です。「マツエク」や「まつ毛エクステ」とも略されます。人工のまつ毛は皮膚に直接付けるのではなく、ツイーザー(ピンセット)を使い、地まつ毛の根元から1mm〜1.5mmの位置に1本ずつ装着していきます。片目で100本以上の植毛をおこなうこともあり、施術時間は1時間〜1時間半ほどになるため、緻密な作業と集中力が求められます。
施術に使う人工のまつ毛はアイラッシュと呼ばれ(英語の原義では「まつ毛」そのものを指す)、太さや長さ、カラーもさまざまです。そのため、事前のカウンセリングでお客さんの好み・要望を正確に聞き出すコミュニケーション能力も重要です。施術には美容師免許が必要となります。

人工まつ毛(写真左)とグルーと呼ばれる専用の接着剤(写真右)
■まつ毛パーマ
まつ毛パーマは、専用のパーマ液を使って、地まつ毛をカールさせる技術です。まつ毛エクステンションと比べて1回あたりの費用が安く、派手すぎず自然な仕上がりにすることができます。施術では、専用のロットで固定した地まつ毛を、接着剤(グルー)で1本ずつ上げていき、パーマ液を使ってカールをつけていきます。施術時間は1時間〜2時間程度です。
目元のすぐ近くにパーマ液を塗布するため、薬剤の正しい知識や取扱方法を学び、お客さんの目や皮膚にトラブルが起こらないよう、細心の注意を払う必要があります。施術には美容師免許が必要となります。
■その他の店舗業務
施術をおこなっていないときには、その他の店舗業務をおこないます。営業時間前は予約管理や掃除、施術道具の準備など。お客さんの来店時には受付、カウンセリング。施術後は会計。営業時間後は片付け、ホームページやSNSの更新などをおこない、その日の勤務が終了となります。3-2.アイリストの働く場所(職場)
ここではアイリストが働く場所(職場)について、それぞれの特徴を紹介します。
■アイラッシュサロン
アイラッシュサロンは、まつ毛エクステンションやまつ毛パーマ、眉カラーなどのサービスを提供する目元ケアの専門店です。経営主体は、法人経営と個人経営に分かれます。法人経営の中には、国内だけではなく、海外に店舗を展開しているサロンもあります。そのため、将来独立開業を目指す人やアイリストとしての専門性を高めたい人に向いています。
■美容室併設型サロン
近年、増加傾向にあるのがアイラッシュサロンを併設した美容室です。アイリストは美容師免許の取得が前提となっているため、希望によってアイリストとして働くことも、アイリスト兼美容師として働くことも可能です。こちらはヘアカットやメイク、まつ毛ケアなど、幅広い美容技術を磨きたい人に向いています。
3-3.アイリストの働き方
サロンで経験を積んだアイリストの中には、時間や場所に縛られないフリーランスになったり、準備期間を経てサロンオーナーになる人もいます。それぞれの働き方やメリット・デメリットを見ていきましょう。
■フリーランス(面貸し)
フリーランスのアイリストの中には、個人事業主として美容室やアイラッシュサロンのオーナーと業務委託契約を結び、席をレンタルして仕事する人もいます。これを「面貸し(めんがし)」や「ミラーレンタル」と呼びます。
サロンのオーナーは、お客さんの入らない空いた時間や余っている席を貸すことで場所代や売上の一部が得られる、フリーランスのアイリストは、「勤務時間を自分で決められる」「店舗を持たずに働くことができる」といったメリットがあります。一方、お客さんが少ないとその分収入が下がるため、集客力や固定客をつくるための技術力が求められます。
■サロンオーナー(独立開業)
アイラッシュサロンなどで経験を積み、店舗運営に関する民間資格を取得後、独立開業するアイリストもいます。
アイリストの独立開業には「マンションの一室などの限られたスペースで始められる」「理想の店舗・サービスを追求できる」「売上が増えた分だけ収入につながる」といった利点があります。
一方、独立開業にあたっては、物件の決定や内装工事、役所への届出、集客など、店舗運営以外の仕事も1人でおこなう必要があり、経営が軌道に乗るまでには時間がかかります。
そのため働きながら開業準備をしておく計画性やお客さんを少しずつ増やしていく忍耐力などが求められるでしょう。規模によって異なりますが、独立開業には100万〜200万円ほどの費用がかかるようです。
まつ毛エクステンションを施術するアイラッシュサロンは、法令上「美容所」にあたるため、都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長または区長)に開設届を提出し、構造設備について検査を受け、基準に適合しなければなりません。
4.アイリストのやりがい・大変なこと

アイリストは2000年前後に日本に伝わり、アイメイクの流行とともに確立・認知されていった新しい職業です。実際にアイリストとして働く人には、どのようなやりがい・大変なことがあるのでしょうか?
<アイリストのやりがい>
・女性の美容をサポートできる
人の第一印象は「顔」で決まるとも言われ、中でも目はとくに重要なパーツとなります。「施術によって人生を変えられる」とまで言うのは大げさかもしれませんが、目をパッチリとさせることで、お客さんが喜んでくれたり、施術前より自信を持てたりすることは、アイリストのやりがいにつながります。
・最新の美容知識・技術が身につく
アイリストは、まつ毛への施術を通して最新の美容知識・技術を身につけることができます。海外の美容事情や国内の女性の興味・関心など、日々移り変わるトレンドを追うことは大変な面もあります。しかしながら、美容に携わることが好きな人であれば、刺激的な環境だと言えるでしょう。
・リピート客の増加と収入の安定
アイリストの仕事の特徴は、1人のお客さんのカウンセリングから施術までを一貫して担当できることです。そのため、一度施術を気に入ってもらえればリピート客となり、自分の技術や人柄に対する信頼を実感できるでしょう。また、そのようなお客さんが増えることで収入が安定化することもやりがいの1つです。
<アイリストの大変なこと>
・肉体的・精神的な負担がかかる
アイリストの2大業務である「まつ毛エクステンション」と「まつ毛パーマ」では、ミリ単位の太さの植毛を繰り返しおこないます。そのため、どんなに優れた技術や集中力を持つ施術者でも知らないうちに疲労が蓄積し、肩こりや眼精疲労などの症状が出やすくなります。また「目元」への施術には相当の注意を払う必要があり、精神的なプレッシャーを感じやすいとも言えます。
・薬剤や接着剤によるアレルギー
パーマ液やカラー剤による手荒れに悩む美容師がいるように、アイリストにも人工まつ毛を接着するグルーの揮発成分によってアレルギー反応が起きる人がいます。症状が出てしまった場合は無理をせず、必ず専門医に相談するようにしましょう。
・固定客を得るために努力が必要
固定客の増加による指名料(インセンティブ)や昇給はやりがいの1つではありますが、そこにいたるまでには地道な努力が必要です。華やかに見えるアイリストに憧れて就職したものの、上記で紹介した<大変なこと>によって、退職する人も少なくありません。
アイリストとして身につけた知識・技術は、結婚や出産など、ライフステージの変化があっても活かせるものです。モチベーションの維持が難しくなったときは焦らずに、目の前のお客さんに満足してもらう「接客の基本」に立ち返るとよいかもしれません。

