
長い夏が過ぎ、あっという間に冬が来そうな寒さになりました。この夏、バーベキューを楽しんだ人も多いでしょう。そのイメージから「牛肉の旬は夏」と考えている人がいるかもしれませんが、実はそれは間違いです。本記事では、2005年に本格的に焼肉にハマって以来、年間100店舗以上もの焼肉店を巡るだけでなく、生産現場にまで足を運び、牛や餌に関する知見を深め、肉の焼き方や部位の特性を独自に研究・分析する焼肉作家、小関尚紀氏の著書『知ればもっと美味しくなる!大人の「牛肉」教養』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集して、「脂たっぷり、まさに絶品」になる牛肉の旬の季節について解説します。
牛肉の旬は、まさかの冬!?
8月29日は焼肉の日だとされています。や(8)きに(2)く(9)と語呂合わせで読めるからで、1993年に全国焼肉協会が制定しました。夏真っ盛り、キンキンに冷えたビールを片手に、美味しそうな肉を炭火でジュウジュウと焼く……。想像するだけでたまりませんね!
さて、焼肉の日があるくらいですから、牛肉と言えば夏のイメージがありませんか?というか、そもそも牛肉に旬はあるのでしょうか?
結論から述べると、牛肉の旬は冬です。牛は寒さに強く、暑さに弱い動物です。この生理的な特徴が、牛肉の質に大きく影響します。
《夏場:食欲不振と水分量の増加》
牛は気温が22度を超えるとストレスを感じ始めると言われています。そのため、蒸し暑い夏には当然バテやすくなります。すると、食欲が落ちて飼料を十分に摂取できなくなったり、水分摂取量が増えて肉の水分量も多くなったりすることがあります。これにより、肉質がやや劣り、旨味が薄まる可能性があるのです。
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《冬場:皮下脂肪の蓄積と霜降りの促進》
一方、冬は牛にとって過ごしやすい季節です。寒さから身を守るために皮下脂肪を活発に蓄えるので、脂質が多く、きめ細かな霜降りになりやすいです。この霜降りが、牛肉特有の甘味とコク、とろけるような口どけを生み出します。
12月~2月にこそ、牛肉を食べよう
ただ、現代の畜産農家は、牛が一年を通して快適に過ごせるよう、多大な努力を払っています。牛舎に大型扇風機やスプリンクラーを設置したり、牛がストレスなく過ごせるように密接飼育を避けたりするなど、さまざまな工夫が凝らされています。
これらの取り組みによって、以前に比べて飼育環境は格段に改善され、年間を通じて質の高い牛肉が安定して供給されるようになりました。しかし、それでも季節による肉の質や味への影響はゼロではありません。
特に、北海道や東北地方のような寒冷地で育った牛は、冬の寒さの中でじっくりと脂肪を蓄えるため、より一層旨味が凝縮され、肉質もいいとされています。これらの理由から、牛肉が最も美味しくなるのは、12月から2月にかけての冬の時期だと言えるのです。
旬の時期に味わう牛肉は脂もたっぷりで、まさに絶品です。今年の冬は、ぜひとも旬の牛肉を狙って、焼肉やステーキ、すき焼きなどを楽しんでみてはいかがでしょうか。
牛肉の旬は冬で、12月から2月にかけて美味しくなる! 今年のクリスマス、来年の正月は牛肉三昧にしてみましょう。おせちに飽きたら、すき焼きです。
小関尚紀
