3. 臨床心理士の仕事内容
臨床心理士は心理テストやカウンセリングなどのさまざまな心理療法を用いて、クライエントの心の問題を解決に導いていきます。
日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士に求められる専門業務を次の4つに定義しています。
・臨床心理査定(心理アセスメント)
クライエントの自己理解や支援のために、面接や心理テスト、行動観察などを通じて相手の特性や問題の状況、課題を明らかにします。さらにクライエントに対してどのように援助するのが望ましいかを探ります。
・臨床心理面接
クライエントの課題に応じたさまざまな心理療法を用いることで問題の克服や苦難の軽減を目指します。臨床心理士の仕事の中でも中心的な専門行為であり、クライエントが自分の心の状態を理解し、自尊感情を取り戻して自己治癒できるよう寄り添いながら進めます。
代表的な心理療法には、次のようなものがあります。
〈クライエント中心療法〉
「クライエントが中心で、カウンセラーは脇役」という考え方のもとおこなう療法。カウンセラーは積極的な指示やアドバイスよりも傾聴に比重を置き、クライエント自らが問題解決の力を取り戻していくよう支援する。
〈認知行動療法〉
クライエントが抱えている問題を具体的にし、考え方や思考法を変えていくことで問題の解決や症状の軽減を図る療法。カウンセラーは傾聴だけでなく説明や提案をおこない、クライエントも話をするだけでなく、新たな考え方を取り入れて行動する。
〈遊戯療法〉
主に子どもを対象とし、会話ではなく遊びを通じて心の問題を発見、解消していく療法。
〈芸術療法〉
絵画、音楽、写真、踊りなどの芸術を通して自己表現をおこない、問題解決の糸口や治療へと繋げていく療法。
・臨床心理的地域援助
地域住民や学校、企業といったコミュニティに所属する人々の心の健康のために支援をおこないます。災害や事故、事件の被害者に対する心のケアや、将来的に心の問題が生じないようにするための予防的働きかけもおこないます。
・調査・研究活動
臨床心理士の技術や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施します。事例研究では現場で対応した実例を取り上げ、クライエントの心の問題がどのように形成され、どのように援助したのかその内容を検証します。
4. 臨床心理士の勤務先
日本臨床心理士会が実施した調査によると、臨床心理士が働く場所は、病院や保健所といった医療・保健領域が最も多く、次いで小中高校をはじめとした教育領域での勤務が多い結果となりました。
また、臨床心理士は非常勤で働く人の割合が約半数近くおり、複数の仕事を掛け持ちして働くケースが多いようです。

・医療・保健領域
医療機関の場合は、精神科、心療内科、小児科のある病院・診療所やリハビリテーションセンターなどが主な勤務先として挙げられます。臨床心理士は医師からの依頼を受けて心理査定(アセスメント)や心理療法をおこなうほか、看護師やリハビリ職といった多職種との連携も求められます。臨床心理士が携わる疾患は、うつ病などの気分障害や統合失調症、依存症、発達障害、認知症など多岐にわたります。なお医療機関では「心理療法士」と呼ばれることもあります。
保健機関の場合は、保健所、保健センター、精神保健福祉センターなどの公的機関で「精神保健福祉相談員」の名前で公務員として働きます。アルコール依存症や薬物依存症の相談、ひきこもりの相談援助、乳幼児の発達検査などクライエント一人ひとりの相談に応じるほか、担当地域の精神保健福祉に関する実態の把握や、心の病や精神疾患について正しい理解を広めるための普及啓発活動もおこないます。
・教育領域
幼稚園で働く心理職を「保育カウンセラー」、小中高校で働く場合は「スクールカウンセラー」と呼ぶことが一般的です。
保育カウンセラーは育児や発達についての相談に応じることが多く、スクールカウンセラーは不登校やいじめの問題、友人関係・親子関係・学習関係の悩み、発達障害・精神疾患の疑い、自傷行為などさまざまな問題に応じます。当事者である児童や保護者からだけでなく、保育者や教職員も含めて幅広く相談に応じ、必要に応じて外部の専門機関とも連携しながら問題の解決を図ります。
また、自治体が運営する教育相談室や教育センターで働く心理職もいます。メール・電話での個別相談やグループ相談にも対応するほか、心理検査や発達検査などをおこないます。
・福祉領域
福祉領域で最も多い活動の場は、児童相談所や児童福祉施設*といった児童福祉の領域です。児童相談所では「児童心理司」「心理判定員」などの名前で呼ばれ、児童虐待の対応、発達障害・療育手帳に関する判定や相談に応じます。児童福祉施設では障がい児を対象とした療育や家族支援が中心となります。
*児童福祉施設…助産施設、乳児院、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童発達支援センター、障害児入所施設などが該当する障害福祉領域では、障がい者の通所施設や入所施設、相談機関などで働きます。心理査定や心理面接をおこない、その結果を受けての関係機関との連携や、障がい者の家族との相談・援助をおこないます。
そのほか特別養護老人ホームや養護老人ホームといった高齢者施設や、DV被害を受けた女性支援をおこなう機関など、社会的に弱い立場に置かれた人たちを支援する場所で幅広く活動しています。
・産業領域
会社員や公務員など働く人のメンタルヘルスを支援する領域です。大企業を中心に企業内の健康管理室や健康管理センター、職場におけるメンタルヘルスを専門に請け負うEAP(従業員支援プログラム)の専門機関などで働きます。「産業カウンセラー」や「相談員」と呼ばれます。
仕事上の悩みの相談や、過労や精神疾患などによる休職者の職場復帰の支援、必要に応じた家族や上司へのコンサルテーション*、従業員を対象としたストレスチェックの実施、職場全体の健康増進の啓発などを担当します。
*コンサルテーション…クライエントが抱える問題に対して、臨床心理士が第三者として臨床心理学的側面から助言をおこない、予防や早期対処に繋げること・司法・法務・警察領域
司法関係機関では家庭裁判所の「調査官」、法務省関係機関では少年鑑別所、少年院などの「鑑別技官」や「法務教官」、刑務所の「処遇カウンセラー」、保護観察所の「保護観察官」、警察関係機関では警視庁や都道府県警察本部の「心理職員」などとして働き、ほとんどの場合が公務員として採用されます。
司法・法務・警察領域での心理職の主な役割は、事件を起こした人の心理査定を通して処遇の方針を示すことや、更生に向けた心理療法をおこなうことなどです。
・大学・研究所
大学院や研究機関で研究職として活動を続けたり、教授として臨床心理士の養成に携わります。多くの機関では学生相談室や臨床心理センターなどが併設されているため、学生や地域住民の相談にも応じるケースが多いようです。
・私設心理相談
個人での開業、または複数のカウンセラーが所属し運営される私設の心理相談機関です。クライエントとは直接契約を結び、独自の手法や裁量でサービスを提供します。来所だけでなくメールや電話、訪問での相談に応じるところもあり、必要に応じて外部の専門機関との連携も求められます。


