3. 臨床検査技師の仕事内容
臨床検査技師がおこなう臨床検査は、検体検査と生体検査の2つに大きく分類されます。
検体検査
検体検査とは血液や尿、細胞など患者さんから採取した検体を用いた検査のことで、次のようなものがあります。
- 一般検査:尿や便、体腔液、髄液などの性状や成分を調べます
- 生化学的検査:血液や尿に含まれる成分を化学的に分析します
- 血液学的検査:血液に含まれる白血球・赤血球・血小板の数や形、機能を調べます
- 輸血検査:血液製剤と患者さんの血液が適合するかどうか検査します
- 微生物学的検査:喀痰や尿、便を培養し、感染症の原因となっている微生物(細菌やウイルスなど)を特定します
- 免疫・血清学的検査:主に感染症やがんの診断のために、血液や尿に含まれる抗原や抗体の有無や量を調べます
- 病理・細胞診検査:主にがんの診断のために、採取された組織や細胞からガラス標本を作成します
- 遺伝子・染色体検査:DNAの塩基配列や染色体の数・構造を調べます
診療補助の一環として、検査に必要な血液の採取(採血)は看護師や臨床検査技師が担ってきました。さらに2015年4月から臨床検査技師の業務が拡大され、鼻腔・咽頭の拭い液、口腔の粘膜、皮膚や爪の付着物などの採取もできるようになりました。ただし、これらの検体採取業務に携わるには所定の研修を修了しなくてはなりません。
生体検査(生理機能検査)
生体検査(整理機能検査)とは医療機器を用いて患者さんの身体を直接調べる検査のことで、次のようなものがあります。
- 心電図検査:心臓が拍動するときに流れる微弱な電気信号を記録し、その波形から異常がないか調べます
- 脳波検査:脳が活動するときに流れる微弱な電気信号を記録し、その波形から異常がないか調べます
- 超音波(エコー)検査:体内の病変部位や胎児の状態を調べるために、体表から超音波を当ててその反射波(エコー)を画像にします
- 磁気共鳴画像(MRI)検査:体内の病変部位を調べるために、強力な磁場を発生させるトンネル状の装置を使い、身体の断面図を撮影します
- 眼底写真検査:緑内障などの眼疾患や糖尿病などの生活習慣病の早期発見のために、眼球の奥にある血管や網膜、視神経を撮影します
- 熱画像(サーモグラフィ)検査:血行障害や自律神経障害、代謝異常、皮膚疾患などの診断のために、体表面の皮膚温度分布を測定します
- 呼吸機能検査:息を大きく吸ったり吐いたりしてもらうことで、肺の大きさや機能を評価します
- 聴力検査:低音域と高音域の聞こえ具合を調べます
- 味覚・嗅覚検査:味覚や嗅覚の感度を調べます

4. 臨床検査技師の勤務先
臨床検査技師の勤務先は、病院や診療所などの医療機関以外にも多岐に渡ります。
病院
病院のような大きな医療機関には臨床検査技師が必ず在籍し、医師からのオーダーに応じてさまざまな検査を実施しています。
病院には複数の診療科があるため、検査技術を幅広く身につけることができます。とくに高度医療を担う大学病院や研究センターなら、最先端の機器や技術に触れることもできるでしょう。
急患や急変に24時間対応する必要があるため、月に数回は当直や夜勤、オンコールが必要となることがあります。
診療所
診療所のような小さな医療機関の場合、臨床検査技師の仕事は生体検査や採血が中心となります。
検体検査が必要なときは外部の臨床検査センターに依頼することが一般的です。
病院などの大型の医療機関に比べるとスタッフの人数が限られているため、検査のほかにも患者さんの受付や案内、事務作業などもおこないます。ただし、基本的に日中の外来対応のみとなるため、当直や夜勤などの勤務はありません。
健診(検診)センター・人間ドック
病院の健診(検診)センターや人間ドック、健診クリニックでは、健康診断などの業務を主におこなうため、生体検査や採血を中心におこないます。
施設の規模によっては検体検査に必要な設備を備えており、生体検査と検体検査の両方をおこなうこともあります。
緊急の対応や夜間の対応を求められることはないため、当直や夜勤はないことがほとんどです。
臨床検査センター
臨床検査センターでは、外部の医療機関から検体検査の代行を請け負っています。
取り扱う検体数が膨大で、一般的な医療機関では対応できないような特殊な検査もできることから、「めずらしい症例を学びたい」「検査技術を磨きたい」と臨床検査センターを志望する技師もいます。新型コロナウイルス感染拡大下では、PCR検査専門の臨床検査センターも登場しました。
旺盛な検査ニーズに応えるために24時間稼働する施設もあり、配属された部署によっては夜勤がある場合があります。
製薬会社、医療機器メーカー
製薬会社や医療機器メーカーなどの一般企業にも臨床検査技師の活躍の場があります。
医薬品関連企業では、新薬の有効性と安全性を確認するための治験の進行をサポートする治験コーディネーター(CRC)や、同じく治験の進行をモニタリングする臨床開発モニター(CRA)、自社の医薬品の情報提供などをおこなう医薬情報担当者(MR)として活躍する人もいます。
また、営業先の医師や医療スタッフに対して検査機器などの自社製品のデモンストレーションや説明をおこなうアプリケーションスペシャリストとして活躍する人もいます。
通常こうした一般企業では、日勤のみとなります。
上記で挙げた勤務先のほかにも、大学などで研究を続けたり、教員として後進の指導にあたったりする人もいます。また、公務員試験に合格すれば保健所などの行政機関で働くこともできます。

