

1. 保育士とは?
保護者に代わり子どもの身の回りの世話をしながら、その成長を助ける
保育士は日中仕事などのために家を空ける保護者に代わり、子どもたちの身の回りの世話をしながら、基本的な生活習慣や集団生活に必要なコミュニケーション能力を身につける手助けをします。
発達段階や季節に合わせて行事やレクリエーションを企画すること、保護者に子どものその日の様子を伝えること、保護者からの相談に乗ることもまた保育士の大切な仕事です。
近年は保育に対するニーズの多様化により、保育所(保育園)以外にも認定こども園、放課後児童クラブ(学童保育)、児童発達支援、放課後等デイサービスなど、活躍の場が広まっています。
2020年の国勢調査によると、保育士の就労人口は約63万人、そのうち約97%が女性でした。男性保育士もこの30年で増加していますが、全体で見るとわずか3%にとどまっています。

保育士と幼稚園教諭の違い
保育士は児童福祉法に基づく資格で、0歳から18歳未満の子どもたちの保育や養育に携わります。それに対して、幼稚園教諭は学校教育法や教員教職免許法に基づく資格で、3歳から小学校就学前の子どもたちの教育に携わります。
保育士=保育所の先生というイメージが強いですが、保育士は保育所以外にも、児童発達支援センターや児童養護施設といった児童福祉施設で働くことができるため、支援対象となる子どもたちが幅広いことが特徴です。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
|---|---|---|
根拠法 | 児童福祉法 | 学校教育法 教育職員免許法 |
所管官庁 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
主な勤務先 | 保育所をはじめとする児童福祉施設 | 幼稚園 |
対象児童 | 0歳〜18歳未満 | 3歳〜小学校就学前 |
目的 | 保育 (保護者の代わりに世話をする、基本的な生活習慣を身につけさせる) | 教育 (小学校の就学に備える) |
保育と教育という名目上の違いはあるものの、共働き世帯の増加など保護者に対する総合的な子育て支援の必要性が高まった結果、その境界は曖昧になりつつあります。
2006年には認定こども園が誕生し、保育教諭という保育士と幼稚園教諭のダブルライセンスを目指す方も増えています。
2. 保育士になるには?
保育士資格が必要
保育士になるには、国家資格である保育士資格を取得する必要があります。
保育士資格を取得する最も一般的なルートは、保育士養成課程のある大学、短期大学、専門学校に進学し、所定の専門教育を修了することです。
しかし、このような専門教育を受けていなくても、各都道府県で実施されている保育士試験に合格すれば資格を取得することができます。
保育士試験の受験資格は最終学歴によって異なるため、保育士になるにはおおよそ次の3つのルートが存在することになります。
〈ルートA〉
厚生労働大臣の指定する保育士養成校(大学、短期大学、専門学校)に進学し、所定の専門教育を修了する
〈ルートB〉
最終学歴が学校教育法に基づく大学*、短期大学、専門学校(2年以上)卒業の場合、保育士試験に合格する
*大学に2年以上在籍し、62単位以上取得済みであれば、在学中・中退でも受験可能
〈ルートC〉
最終学歴が高校卒業*の場合は2年2,880時間以上、中学卒業の場合は5年7,200時間以上、児童福祉施設で実務経験を積んだうえで、保育士試験に合格する
*高校の保育科を1996年3月31日以前に、保育科以外(普通科など)を1991年3月31日以前に卒業している場合、実務経験がなくても受験可能
保育士試験の受験資格に関する詳細は、主催団体である一般社団法人 全国保育士養成協議会の「受験資格」のページをご確認ください。

専門教育を受けていなくても試験に合格すれば資格を取得できる保育士は、社会人になってからでも挑戦しやすい職種と言えます。ただし、保育士試験の合格率は20〜30%程度と低く、十分な対策が必要です。

保育士試験の概要
保育士試験を受けるチャンスは年に2回あり、例年次のようなスケジュールで実施されています。
〈前期〉
- 1月:受験申請
- 4月:筆記試験
- 6月:筆記試験結果通知書・実技試験受験票送付
- 7月:実技試験
- 8月:合格通知書・一部科目合格通知書送付
〈後期〉
- 7月:受験申請
- 10月:筆記試験
- 11月:筆記試験結果通知書・実技試験受験票送付
- 12月:実技試験
- 1月:合格通知書・一部科目合格通知書送付
保育士試験の内容は次のとおりです。
〈筆記試験〉
筆記試験は次の9つの科目から出題され、それぞれ正答率60%以上が合格基準となります。合格した科目には3年間の有効期間があるため、一度に全科目合格できなくても、有効期間内に不合格になった科目を再受験して合格すれば大丈夫です。
- 保育原理
- 教育原理(●)
- 社会的養護(★)
- 子ども家庭福祉(★)
- 社会福祉(★)
- 保育の心理学(●)
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
●…幼稚園教諭の資格を持っている場合、免除される科目
★…社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の資格を持っている場合、免除される科目
〈実技試験〉
実技試験を受験できるのは、筆記試験の合格者のみです。実技試験は次の3つの分野から2つを選んで受験します。
- 音楽表現(ピアノ等を演奏しながら歌をうたう)
- 造形表現(保育の一場面を絵画で表現する)
- 言語表現(3分間の素話をする)
*幼稚園教諭の資格を持っている場合は、実技試験も免除される
保育士試験の合格率の推移
過去5年間、保育士試験の合格率は20〜30%程度で推移しています。なお、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で全都道府県で筆記試験が中止されたため、実技試験の受験申請者数と合格者数だけを反映しています。


