3. 歯科衛生士の仕事内容
法律で定められている歯科衛生士の業務は歯科診療補助、歯科予防処置、歯科保健指導の3つで、これらを総称して歯科衛生士の三大業務と呼びます。
歯科診療補助
歯科医師の指示を受けて、診察や治療の一部を担当します。
ただし、歯科衛生士は歯科医師の指示さえあればどんな業務でも実施できる──というわけではありません。
歯科でおこなわれる医行為は絶対的歯科医行為と相対的歯科医行為に分けることができます。絶対的歯科医行為は歯科医師にしか認められていないため、たとえ歯科医師からの指示があったとしても歯科衛生士がおこなってはいけません。それを除く相対的医行為は診療補助として歯科衛生士がおこなうことができます。
〈絶対的歯科医行為〉
- 歯の切削に関連する行為*
- 切開や抜歯などの出血をともなう処置
- 精密印象や咬合の採得
- 皮下、皮内、歯肉などへの注射
*歯を削ること以外に、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を装着することも含む
〈相対的歯科医行為〉
- 仮歯の調整、仮着
- 歯周組織検査
- 概形印象の採得
- 表面麻酔薬の塗布 など
なお、相対的歯科医行為は業務の幅が広いため、その実施の可否については患者さんの状態や歯科衛生士の技能の習熟度に応じて歯科医師が判断することになっています。
tips|歯科衛生士のレントゲン撮影はNG
歯科診療にレントゲン撮影(X線撮影)はつきものですが、放射線を人体に照射することができるのは医師・歯科医師・診療放射線技師のみと法律で定められているため、歯科衛生士がレントゲン撮影をおこなうと法令違反となります(参照:e-gov法令検索|診療放射線技師法)。
仮に歯科医師からの指示があったとしても違法行為であることに変わりはなく、実際にレントゲン撮影を指示した歯科医師やそれに従った歯科衛生士が逮捕される事件も起きています。
歯科予防処置
歯科医師の指示を受けて、歯垢や歯石を除去(スケーリング)したり歯の表面にフッ素を塗布したりします。
歯垢とは歯の表面に付着した細菌のかたまり(プラーク)のことで、わずか1mgの歯垢に1〜2億もの細菌が生息していると言われています。これらの細菌が作り出す酸や毒素がむし歯や歯周病の原因となります。
また、歯垢が石灰化して歯石になるとその表面の凸凹に歯垢が形成されやすくなるため、歯垢を早めに除去して口腔内の環境を正常に保つこと(プラークコントロール)が重要となります。それには日々のセルフケアに加え、プロである歯科衛生士による定期的なメンテナンスが必要なのです。
歯科保健指導
むし歯や歯周病の予防のために、歯みがき指導(TBI*)や食生活指導をおこないます。指導にあたっては、むし歯や歯周病が発生するメカニズムや健康に与える影響について丁寧に伝えることで、動機付けをおこなうことも重要です。
*Tooth Brushing Instrucionの略歯科保健指導は、院内はもちろん求めに応じて保育園や幼稚園、小学校、保健所などで実施することもあります。近年は高齢化を受けて介護施設での保健指導のニーズも増えています。
4. 歯科衛生士の勤務先
歯科衛生士の勤務先は9割が歯科医院で、それに病院が続きます。さらに、全体に対する割合としては少ないものの、市区町村(保健センター)や保健所などの行政機関、老健や特養などの介護保険施設などにも歯科衛生士のニーズがあります。

歯科医院
歯科医院のほとんどが主にむし歯や歯周病の予防や治療をおこなう一般歯科です。診療補助をはじめとして、予防処置、保健指導と歯科衛生士の基本となる臨床経験を積むことができます。
歯科医院の場合、求人数が多く、転職や復職がしやすいことがメリットとして挙げられます。立地によって客層が大きく異なるほか、診療科目を小児歯科や訪問歯科、矯正歯科、審美歯科、ホワイトニング、インプラントなどに特化したクリニックもあるため、技術の幅を広げるために複数のクリニックを経験する衛生士もいます。

病院
病院に勤務する歯科衛生士は、歯科や口腔外科で外来患者さんに対する診療補助、予防処置、保健指導をおこないます。ほかにも入院患者さんの口腔ケアを担当するなど、口腔衛生の専門家としてチーム医療に貢献します。さらに、高齢の患者さんの場合は自宅や施設に赴き、訪問歯科診療をおこなうこともあります。
このように病院の場合、全身疾患やフレイル*に関する理解、多職種や地域との連携がより重要になります。勉強会や研修も積極的におこなわれているため、成長意欲のある方に向いています。また、福利厚生がしっかりしている点も魅力です。
*加齢により心身が衰え、健康障害を引き起こしやすい状態のこと行政機関
ごくわずかではありますが、市区町村が運営する保健センターや保健所などの行政機関で働く歯科衛生士もいます。保健センターや保健所は広く住民の健康を守ることを目的とした公衆衛生機関です。そのため支援対象は幅広く、幼年期から学童期、成人期、高齢期とあらゆる年代の方に対して口腔ケアに関する教育や指導をおこないます。
介護施設
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、介護医療院、デイサービスなどの介護施設でも歯科衛生士が働いています。食べ物を噛み砕き、飲み込む力は加齢と共に低下し、誤嚥性肺炎や認知症のリスクを高めることから、歯科衛生士が口腔ケアや咀嚼・嚥下機能訓練などをおこないます。ほかの介護職員に対して口腔ケアの指導をおこなうこともあります。
企業・学校など
歯科衛生士として働いた経験を活かして、歯科材料や歯科医療器具などを販売する事業会社で営業や企画・マーケティングを担当したり、歯科衛生士の専門学校で教職に就いたりする衛生士もいます。

