京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
紫のゆかりを宿す庭。
―サロン&ギャラリー 虹霓―

古より高貴な人だけが身に着けることを許された色、紫。『サロン&ギャラリー 虹霓』のある紫野は、その色を得るための植物、紫草が栽培されていたことが地名の由来だという。主宰する染色家の野原佳代さんは、絶滅が危惧される紫草の再生にも取り組む。「紫野にあるこの建物との出合いは、かけがえのないご縁でした」と語る。
庭を手がけたのは〈庭辰〉藤井辰男。「花背に生まれ育った藤井さんは、日々山の景色を目にし、自然の本質を見抜いた庭を仕立ててくれます」と信頼を寄せる。石組みと白砂で川筋を描き、山で手に入れた枝ぶりのよい紅葉を主役に据えた。紫草の染色に欠かせない椿は、淡い桃色が美しい西王母を。海老根、白山吹、山紫陽花、杜鵑草、碇草と、折々に可憐な花を咲かせる山野草で彩りを添える。若葉がまぶしく芽吹く春、深い緑が力強い盛夏、葉を落とし樹形の美しさを際立たせる冬。折々に趣を変える紅葉も、とりわけ目を喜ばせるのは秋。苔の緑に映え、重なり合いながら色づく様は、ひときわ心に残る美を纏う。


次代へと受け継ぎたい着物と着物にまつわる文化工藝を発信する場。
『サロン&ギャラリー 虹霓』
京都市北区紫野西御所田町34−2
なし 13時~17時 日〜火休
詳細はInstagram(@salon.gallery.kougei)を。
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato
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