お酒の原料は全部“植物”? ビール・日本酒・ワインなどを生む8種の植物の秘密

お酒の原料は全部“植物”? ビール・日本酒・ワインなどを生む8種の植物の秘密

お酒

夏はビール、冬は日本酒……私たちが日常たしなむビールやワインなどのアルコール飲料には、さまざまな種類があります。じつは、そのほとんどは植物から生まれたもの。日本酒の原料はお米、ワインの原料はブドウ……では、そのほかのお酒の材料はどんな植物か知っていますか? 今回は、ビールからテキーラまで、世界中で親しまれるお酒のもととなる 8種類の植物について、ガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが解説。材料となる植物を知れば、いつものお酒がもっと楽しめるかもしれませんよ!

お酒の原材料1…大麦
― ビール・ウイスキー・麦焼酎のベースになる穀物

ビール
allstars/Shutterstock.com

ビールやウイスキー、そして麦焼酎は麦からつくられることは、誰もが知っていますが、さて、この麦はパンやケーキを作る小麦粉と同じ麦でしょうか? 結論から言えば、ビールやウイスキーや麦焼酎は、小麦粉の小麦とは異なる「大麦」、そのなかでも「二条大麦」という種類が原料となっています。

大麦と小麦
左が大麦、右が小麦。Jenya Smyk、artifex.orlova/Shutterstock.com

大麦と小麦は、どちらもイネ科の穀物で「麦」ですが、大麦はイネ科オオムギ属、小麦はイネ科コムギ属と分類から異なり、さまざまな点で違いがあります。

以下に、大麦と小麦の違いを比べてみましょう。

大麦と小麦
左が大麦、右が小麦。kungfu01、maxbelchenko/Shutterstock.com
大麦小麦
外観穂の形:穂が長く、芒(のぎ)と呼ばれる針のような突起が目立つ。
粒の形:粒が丸みを帯び、粒の中央の溝(腹溝)がはっきりしている。
穂の形:穂が短く、芒も短いか、またはない。
粒の形:粒が細長く、粒の中央の溝(腹溝)は浅め。
成分タンパク質:グルテン(タンパク質)含有量が少ない。
食物繊維:小麦よりも食物繊維を多く含む。
タンパク質:タンパク質(グルテン)を多く含む。
食物繊維:大麦よりも食物繊維は少ない。
用途麦ごはん、麦茶、ウイスキー、ビール、焼酎、味噌、醤油などの原料として利用。パン、麺類、お菓子などの原料に利用。
食感麦ごはんにすると、プチプチとした食感。パンや麺類にすると、もちもちとした食感。
栄養価食物繊維が豊富で、血糖値の上昇を抑える効果がある。タンパク質が豊富で、筋肉や体の組織を作るのに役立つ。
栽培方法比較的寒さに強い。温暖な気候を好む。
種類二条大麦と六条大麦がある。硬質小麦と軟質小麦がある。

続いて、ビールや焼酎やウイスキーなどの原料として使われることが多い二条大麦の特徴を見てみましょう。

<二条大麦の特徴>

  • 粒が大きい:六条大麦に比べて粒が大きく、デンプン含有量が多いのが特徴です。
  • 発芽しやすい:発芽が均一に進みやすく、麦芽製造に適しています。
  • 酵素力価が高い:酵素を多く生成するため、糖化やアルコール発酵を効率的に行えます。

これらの特徴から、二条大麦はウイスキーやビールや焼酎などの醸造に適しているとされています。

ビール・ウイスキー・麦焼酎の違いを生む製造工程

ビール、ウイスキー、麦焼酎
AntAlexStudio、jazz3311、evgeeenius/Shutterstock.com

麦焼酎、ウイスキー、ビールは、同じ大麦が主原料。しかしながら、製造過程が大きく異なるため、それぞれ全く異なる風味を持つお酒になります。ただし、ビールにはホップが加わることも風味の違いの大きな要因になります。

この3つのお酒に共通する最初の工程が、麦芽作り。原料として最も重要な大麦麦芽は、大麦を水に浸して発芽させ、乾燥させたものです。この過程で、大麦に含まれるデンプンを糖に変える酵素が作られます。この麦芽が、ウイスキーやビールでよく耳にするモルトです。

工程ビールウイスキー麦焼酎
① 麦芽作り大麦を発芽・乾燥させて、糖化酵素を含む麦芽(モルト)を作る。
② 糖化・麦芽を粉砕し、温水と混ぜて麦汁を作る。麦芽に含まれる酵素がデンプンを糖に分解。
・主に麦汁を煮沸する工程でホップを添加。
麦芽を粉砕し、温水と混ぜて麦汁を作る。麦芽に含まれる酵素がデンプンを糖に分解。蒸した麦に麹菌を繁殖させ、麹菌がデンプンを糖に分解。
③ 発酵麦汁に酵母を加えて発酵。麦麹に酵母を加えて発酵。
④ 蒸留行わない。発酵液を蒸留してアルコール度数を高める。
⑤ 熟成貯蔵タンクで熟成。樽で熟成。貯蔵タンクや甕で熟成。
⑥ 製品化ろ過 → 瓶詰または缶詰。ろ過・加水 → 瓶詰。

<製造過程の主な違い>

  • 糖化方法: ビールとウイスキーは麦芽の酵素を利用しますが、麦焼酎は麹菌の酵素を利用します。
  • 蒸留: ビールは蒸留を行いませんが、ウイスキーと麦焼酎は蒸留を行います。
  • 熟成: ビールは貯蔵タンクで熟成させますが、ウイスキーは樽で熟成させ、麦焼酎は貯蔵タンクや甕で熟成させます。

これらの製造過程の違いにより、麦焼酎、ウイスキー、ビールはそれぞれ異なる風味を持つお酒になります。

豆知識:「whisky」と「whiskey」の違いとは

ウイスキー
Kyle J Little/Shutterstock.com

ウイスキーのスペル「whisky」と「whiskey」の違いは、主に産地による慣習的なものです。

  • whisky: スコッチウイスキー、カナディアンウイスキー、日本のウイスキーなどで使われることが多いです。
  • whiskey: アイリッシュウイスキーやアメリカンウイスキー(バーボンウイスキーなど)で使われることが多いです。

大麦の産地と育て方

大麦
Iv-olga/Shutterstock.com

大麦は世界中で栽培されており、その産地は多岐にわたります。主な産地は、ロシア、ウクライナ、オーストラリア、ドイツ、トルコ、カナダなど。日本国内では、愛媛県、香川県、大分県などの瀬戸内海周辺地域や九州北部で主に栽培されています。

大麦の育て方は、品種や栽培地域によって異なりますが、基本的な手順は次のとおりです。

1. 品種選び

  • 大麦には二条大麦と六条大麦の2種類がありますが、ウイスキー、ビール、焼酎には二条大麦が多く使用されます。

2. 種まき

  • 種まき時期には、秋まきと春まきがあります。
    • 秋まきは9月下旬~10月上旬。
    • 春まきは3月下旬~4月上旬。
  • 種まき前に、畑を耕し、肥料を施しておきましょう。

3. 栽培管理

  • 発芽後は、適切な間隔になるよう間引きを行います。
  • 雑草が生えてきたらこまめに除草を。
  • 追肥は生育状況に合わせて行います。
  • 病害虫が発生したら、早めに対処しましょう。

4. 収穫

  • 収穫時期は、一般的には5月下旬~6月上旬です。品種や栽培地域によって異なります。
  • 穂が黄色く色づいたら、収穫のサインです。
  • 収穫後は、乾燥させて保存しましょう。

その他

  • 大麦は連作障害を起こしやすいので、同じ場所での栽培は避けましょう。
  • 日当たりと水はけのよい場所を好みます。
  • 大麦は、比較的育てやすい作物ですが、病害虫には注意が必要です。
大麦
branislavpudar/Shutterstock.com

それぞれのお酒の製造に使われる大麦の品種は、その風味や特性に大きく影響するため、各醸造所はこだわりを持って慎重に選んでいます。品種を組み合わせたり、独自の栽培方法を採用したりすることで、数々の個性的なお酒が生み出されています。

お酒の原材料2…米
―日本酒・米焼酎・泡盛をつくる穀物

稲
ABCDstock/Shutterstock.com

米から作られるお酒といえば、日本酒が代表的な存在ですが、米焼酎や泡盛なども米を原料としています。

日本酒の主な原料には、特に酒米と呼ばれる品種が用いられます。酒米は、デンプン含有量が多く、タンパク質含有量が少ないことが特徴。代表的な酒米の品種は、山田錦、五百万石、美山錦などが挙げられます。

田んぼ
Watthana Tirahimonchan/Shutterstock.com

日本酒造りは、大まかな過程は下記のとおりです。

工程内容目的・ポイント
① 原料米の準備精米:玄米を磨き、糠を取り除く。・タンパク質・脂肪を除き、雑味を減らす。
洗米・浸漬:精米した米を洗い、浸水。・ムラができないよう米全体に吸水させる。
蒸米:洗米後の米を蒸す。・麹造りや仕込みに使う蒸米を準備。
② 麹造り蒸米に麹菌を繁殖させ、「麹」を作る。・麹菌の酵素がデンプンを糖に変える。
・日本酒の風味や味わいを大きく左右する重要工程。
③ 酒母造り蒸米・麹・水・酵母を混ぜ、「酒母(しゅぼ)」を作る。・「酒母」は優れた酵母を大量に培養したもので、糖を分解してアルコールを生み出す。
・健康な酵母を育み、日本酒の発酵の源となる重要要素。
④ 仕込み蒸米・麹・酒母を3回に分けて加える(三段仕込み)。・酵母の活性を高め、安定した発酵を促進。
仕込みタンク内で発酵が進む。・酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに分解。
⑤ 搾り・濾過発酵後のもろみを搾り、酒と酒粕に分ける。
必要に応じて濾過を行う。・透明度・味を調整。
⑥ 火入れ・貯蔵搾った酒を加熱殺菌(火入れ)。・微生物を殺菌して品質を安定化。
種類によって、火入れ後一定期間貯蔵タンクで熟成。・熟成で味をまろやかに。
⑦ 割水・瓶詰め必要に応じて水を加え(割水)、アルコール度数を調整。・飲みやすい度数(約15%前後)に調整。
瓶詰めして出荷。
オーナメンタルグラス
オーナメンタルグラスを取り入れた庭。Chiyacat/Shutterstock.com

ガーデンではなかなか登場しないイネですが、イネ科の植物は庭を彩るオーナメンタルグラスとしても美しいものが多いですね。インテリアとしてガラス容器などに入れて水耕栽培すると、根の成長も楽しめます。

稲
インテリアとして楽しむグラス類(左)とイネの花(右)。studio_24、tamu1500/Shutterstock.com
秋に輝きを増すグラスガーデンの魅力その2 日本で人気の高いグラス類

あなたにおすすめ