果たしてコロナワクチン接種の有効性や正当性はどれほどあったのだろうか――。そんな疑問に対し、医師や研究者たちが科学的な検証を試みようとする姿を追ったドキュメンタリー映画がある。その名前は『ヒポクラテスの盲点』。公開以来、満席が続出。公開館は全国で拡大し、パンフレットは公開から3日で多くの上映館で完売した。
◆日本人の平均寿命は2021年を境に短くなった

その後も目を疑うようなデータがスクリーンに流れる。戦後下がり続けていた日本人の年齢調整死亡率(高齢化の影響を除外した統計)がコロナワクチンの接種を開始した2021年から急激に上がったと共に、戦後伸び続けていた日本人の平均寿命は2021年を境に短くなった(出所:Yuriko Hirai et.al 臨床評価2024年52巻2号「新型コロナワクチン接種後の大動脈解離:症例と厚生労働省への死亡報告,そして文献的考察」より)。
2回目の接種をした5日後に死亡した男性の遺族は「何が起こったのか知りたい」と語る。妻と生まれたばかりの6ヵ月の男児との突然の別れ。遺体の解剖後わかったのは、心筋細胞が断裂していたということだった。健康そのものだった28歳の男性の身に、なぜ、このようなことが起こるのか……。他にも接種後に寝たきりになった10代の若者たちが何人もいる。
福島雅典医師(京都大学名誉教授)をはじめコロナワクチン接種後の死亡例や後遺症の救済や治療法の開発に懸命に取り組む医師たちは、時折、涙を詰まらせてインタビューに応じていた。
医学の祖・ヒポクラテスは言った、「何よりもまず、害をなすなかれ」と。「ワクチンを打たなければならない」という雰囲気に覆われた社会に盲点はなかったのだろうか――。
この映画は重大な事実を、淡々と描いていく。しかし、なぜ、こんな大事なことを今まで自分は知らなかったのか?そんな疑問を抱えながら、企画・監督・編集を担った大西隼監督に制作の経緯や意図などを聞いた。
◆自分自身が知りたかった
――制作の経緯についてお聞かせください。大西:大学院に進学して、博士論文ではRNAとタンパク質の相互作用について研究していたこともあり、コロナワクチンがメッセンジャーRNAを用いた新技術であることはずっと引っかかっていました。そして、ある時スマホでYoutubeを見ていたら、福島雅典医師による2023年2月の記者会見がたまたま目に入りました。コロナワクチン接種と死亡率に関するデータを厚生労働省に対して開示請求したところ、不開示とした決定を取り消すことを東京地裁に提訴した時の会見です。
無意識レベルで気になっていたことが、パチンと弾けたというか、この先生は科学と事実をもとに真実を見ようとしている、語ろうとしていると直感しました。半年ほど考えた末、福島医師に取材を申し込みました。
2023年当時も、コロナワクチン接種後の副反応疑い死亡報告はすでに2000件を超えていたのに、接種の推奨は続いていた。何が起こっているのかを知りたいという気持ちを抑えられなかったです。本当にワクチン接種の有効性や正当性はどれほどあったのだろうか、自分の体にとってはどうだったのかと…。それを知るための一番の近道が、福島医師の肩越しにカメラを回すことでした。
そして、取材を始めてからは、福島医師の医師・科学者としての矜持や責任感、憤りや感情の部分も含めて、人間的な厚みに圧倒されました。

