◆専門家の予測は
――例えば、年代によっては未接種者より接種者の方が陽性率が高いという統計など、コロナワクチンの感染予防効果が疑われるような客観的なデータが映画中に登場しますが、これは専門家であれば予測可能だったことなのでしょうか。大西:「コロナワクチンを打った方が感染しやすくなる」ということも、完全に実証されたわけではありません。それが包括的に検証されていないことこそが、最大の問題の一つだと思います。「接種するほどに感染しやすくなる」ことを危惧していた医師や研究者は、確かにいましたが少数でした。
ただ、コロナウイルスはどんどん変異していくので「さほど効かないのではないか」、「ワクチンでウイルスに対抗してもいたちごっこになる」と予測した専門家はもっと多くいたはずだと思います。
一方で「僕はこう予測しますのでワクチン接種を止めて下さい」と言って止まるものではありません。接種事業は当時の菅(義偉)政権によって押し進められた国策だったからです。「接種後の死亡報告」が募って来て初めて、その事実をもとにコロナワクチンの安全性についての疑問を表明することができます。
国民全員を対象に、接種事業が一気に進んだことを振り返ると、多くの人たちが思考停止に陥っていた異常事態であったことは間違い無いと思います。やはり僕は、若年層全般への接種推奨に正当性はなかったと、今は考えています。
◆利益が不利益を上回れば接種

大西:例えば今回、尾身茂さんをはじめとするパンデミックに対する専門家委員会が組成されましたが、その後の本や資料を読むと、コロナ対策の各論点について委員会の中でも様々な意見があり、議論があったことがわかります。
しかし、方針を最初に決めるのは政府です。政府が「右だ」と決定したとして、それに対して専門家委員会が「左だ」と言い続けることは難しい。それが権力、国家運営の現実だと思います。不測の事態では、科学的な正しさを導き出すことだけでも難しい上に、それを臨機応変に政策に反映させることの困難や限界は、今後の大きな課題だと思います。

