◆「結婚できない」一番の理由は…
ヌシさんが相手から“お断り”される理由はさまざまだが、一定数、婚活を趣味とするスタンスを「真剣さに欠ける」と判断する男性がいるという。「私がSNSで自分の婚活記録をつけているのをみて、『真剣に取り組んでいないのではないか』と言われることはありました。私は婚活を自分が楽しみ、可能なら、多くの人にその楽しさを伝えたいのでSNSをやっているのですが」
現在、ヌシさんは“婚活界隈”の人々とリアルオフ会をするなどして、情報を共有している。
話も面白く、容姿にも気を使っているヌシさんがなぜ婚活市場で「売れ残る」のか。真剣さが伝わらないことはあり得るが、話を聞いていくうちに核心が見えてきた。
「私、相手の男性には婿に入ってほしいんです」
ヌシさんの実家は父親が母親の家に入り婿として入った経緯がある。家族円満の成功例として自らの家庭を思い浮かべるヌシさんは、相手の男性にもそれを求めているのだという。
「年齢もちょうどよく、年収も1000万円に近い、いい感じの男性がいました。けれども、やはり“入り婿”のワードを出すと途端に『親が許さないと思う』と顔が曇りますね。結局、入り婿でもいいという男性はいませんでした。だから、なるべく最後のほうにこの条件は出すようにしています」
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いまだゴールは見えてこないというヌシさんだが、その目は希望に満ちている。「目標は500名に会うことです」。単調な日常に刺激を与えてくれる婚活。目的を遂げれば、家庭を築いて平穏な日常がやってくる。その端境に長く留まって、ヌシさんは終わらない青春を楽しんでいるのかもしれない。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

