内閣府の’22年度の調査によれば、15~64歳のうち推計146万人、実に50人に1人が引きこもり状態(半年以上にわたって家庭にとどまり続けている状態)。年齢別は、40~64歳の引きこもりが約85万人と大きな割合を占める。
そんな働けずに社会から離れたまま年を重ねた引きこもりたちに今、「親の死」という現実が迫っている。引きこもり状態を金銭面で支えてきた親の死後、彼らはどんな現実に直面するのか?
「大人の引きこもり」歴40年の男性が、自立への道を歩む中で感じることを告白する。
◆高校を2年で中退してから引きこもりに
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「清掃の仕事は体力的にキツいですが、『疲れたのは頑張った証し』となんとか前向きに捉えるようにしています。月の手取りは10万円ほどです」
国近さんは高校を2年で中退。アルバイトは長続きせず、以来家で過ごすようになった。
「年齢が上がるにつれ『このままじゃいけない』と焦りを抱えましたが、気づけば何十年もたっていました」
50代前半、80代の両親が相次いで逝去、天涯孤独となった。生活費は親の残した預金から引き出す月6万円のみ。
「墓も造れず、お金がいずれ尽きるのは明らかでしたが、のうのうと生きてきた自分は『生活保護を受けるのは違う』とも考えていました」
◆55歳で訪れた人生の転機
やがて直面したのが、住まいの問題だった。「長年、市営住宅に住んでいましたが入居権は原則、親から子へ承継できないんです。障害もなく高齢でもない自分は、“不法居住”となり家賃は2倍に跳ね上がりました。既存の枠組みから外れてしまった人も、生活を立て直せるよう、公営住宅の入居基準が緩和されたらいいなと思います」
精神的ストレスからか、手足の震えや不眠に悩んだ。転機は55歳。引きこもり相談を行うNPOに出合ったことだ。
「自分を引きこもりとは、あまり思っていなかった」と国近さんは語るが、毎週通うにつれて人との触れ合いも徐々に増え、2年後、スタッフの勧めで就労した。
「仕事終わりの一杯のビールがささやかな楽しみ」と国近さんははにかむ。休みの日には、神社仏閣を巡る一人旅を楽しんでいるという。
「“底辺”でもいいから社会と繫がっていたい。いいことがあってもなくても、穏やかに過ごせればいいかな」
国近さんの再出発は、今も静かに続いている。
【国近 斉氏】
1962年、山口県生まれ。約40年間、自宅で家事などをして過ごす。両親の死後、55歳のときNPOに繫がる。現在は清掃業に従事
取材・文/週刊SPA!編集部
―[親の死後を生きる[引きこもり中年]の苦闘]―

