「介護とお金」の3つの盲点
介護の相談を受けるなかで感じるのは、「お金の誤解」が多いことです。次の3点で注意が必要になります。
1.「資産はあるけど使えない」資産構造
不動産・定期預金・名義違いなど、流動性の低い資産が多いと、いざというとき現金が出せません。
2.「介護費用」は想定以上に長期化する
平均介護期間は約5年。最初は在宅で費用を抑えられても、症状が進行した後半戦では施設費用が重くのしかかります。
3.「認知症になる前」の備えがすべて
認知症発症後は、家族でも預金を動かすことが困難になります。早めに「任意後見制度」「家族信託」「成年後見制度」といった法的な備えは、元気なうちにしかできません。
「お金の安心」は“備えと会話”から生まれる
「うちは大丈夫」と思っていても、実際に介護が始まると、施設探し、費用、手続き、そして将来への不安……すべてが一度に押し寄せてくるものです。だからこそ、以下の準備が不可欠です。
・元気なうちに、家族でお金と介護の話をする
・施設に入るのか、どんな生活を望むのかを記録に残す
・資産を動かせる仕組みをつくる(家族信託・任意後見など)
これらが“お金の備え”であり、同時に“心の備え”になります。
「お金がある=安心」ではない時代に
81歳の母がいった「お金のことは心配いらない」という言葉。それは、もしかしたら「子どもに迷惑をかけたくない」という想いの裏返しなのかもしれません。介護とお金の問題は、単なる「数字の計算」ではありません。そこには、“家族の感情”と“お互いへの信頼”が深く関わっています。
家族の会話のなかで、「どこで、どんな最期を迎えたいのか」を一緒に考えること。それこそが、本当の意味での「家族の安心」に繋がります。介護資金をめぐる問題は、「貯金の額」よりも「仕組みと会話」がすべてなのです。
親の意向を尊重しつつ、法的・経済的に資産を動かせる環境を整えること。それが、家族にとって最大の“老後リスクヘッジ”になります。
森 逸行
ファイナンシャルトレーナーFP事務所
代表
