いつまでも輝く女性に ranune
高額税金で「稼ぐほど損」の日本、富裕層優遇で「お金がお金を生む」米国。成功者の証〈アメリカン・ドリーム〉は“貧富の格差拡大”の象徴

高額税金で「稼ぐほど損」の日本、富裕層優遇で「お金がお金を生む」米国。成功者の証〈アメリカン・ドリーム〉は“貧富の格差拡大”の象徴

「お金」が「お金」を生むアメリカでは「再分配」が不十分

一般に、経済成長のプロセスでは必ず「格差」は発生します。それをそのまま放置しておくと「格差」は開く一方になります。したがって、どこかの時点で「格差」を修正しなくてはなりません。これは政府の役割です。豊かな人から「税金」というかたちで吸い上げて、社会に還元するという政策が必要になります。これを「再分配政策」と呼びます。

アメリカの税制では、連邦所得税は累進課税となっており、富裕層には名目上37%の最高税率が課されています。ただし、各種控除や、キャピタルゲインなどの投資収益が労働所得に比べて低い税率で課税されることから、実効税率が相対的に低くなるケースも多く、その点について「富裕層から十分に税金を吸い上げていない」との批判が存在します。

有名な例として、投資家ウォーレン・バフェット氏が「自分の税率は秘書より低い」と述べたことがあり、こうした現象を象徴しています。

「お金」が「お金」を生み出すのです。アメリカでは、再投資をする人たちを優遇している結果、「格差」が拡大しているということです。再投資が活発になれば、企業は新しい技術などを開発し、さらなる経済成長につながっていきます。そのサイクルは否定できませんが、「再分配」政策が十分に行われていないことは問題です。

その結果、高い経済成長を達成できる対価であるかのように、一方で社会的な不安定さが生まれてくるのです。したがって、経済成長と再分配のバランスをとることが政策として求められます。

日本では、高額な税金ゆえに働く意欲がなくなり、潜在的な経済成長を達成できていない状況だといわれています。たとえば、日本のタクシーの運転手の方からこんな話を聞いたことがあります。自分たちは歩合制なので、働いて収入が増えても税金が増えるだけなので、あまり働かないほうがいいと言うのです。

日本は、アメリカに比べると貧富の差は大きくないかもしれませんが、働くインセンティブを削ぐような制度になっているために、経済成長やイノベーションで遅れをとってしまうのも自然なことかもしれません。

対日トランプ関税は15%で決着

2025年4月に発表された「トランプ関税」では、日本からの対米輸出に一律24%の関税を課すとされ、日本を含めて世界中が大騒ぎとなりました。その根拠は対米貿易における日本の大幅な黒字にあります。2024年にはアメリカの対日貿易赤字は694億ドルでした。

その後、相互関税上乗せ分は7月9日まで90日間の一時停止となりましたが、トランプ大統領は7月1日には、日本への相互関税率を「30%または35%、あるいは我々が決める(ほかの)数字に引き上げる」との考えを示しました。さらに、発動日を8月1日として、約3週間の「交渉」期間が与えられたわけです。

自動車は日本にとって要の産業になっており、自動車産業の就業者(558万人)は、日本の就業者人口(6781万人)の約8%を占めています。また、2024年の対米輸出額の約3分の1を自動車および自動車部品で占めています。

[図表]日本の各国への輸出とアメリカへの自動車輸出


そこで、日米交渉では、自動車だけではなく、農産品、エネルギー、造船、軍用装備品の調達など様々な問題をセットにして、トランプ大統領との交渉の場に臨んだといわれています。

その結果、7月23日に「15%」の決着が発表されました。「24%」(あるいは35%など)がいわゆる「参照点」になっていて、それからどのくらいまで引き下げられるかという交渉だったのです。

報道によれば、トランプ大統領は成立1%の引き下げごとに見返りを要求したといわれ、交渉後には、「よいディールができた」と満足していたとのことでした。ただし、日本が提供するとした巨額の投資についてなど、詳細を詰める作業は一筋縄ではいかない可能性もあり、トランプ大統領との交渉は終わりがないともいわれています。


中林 美恵子
政治学者
早稲田大学教授
公益財団法人東京財団理事長

あなたにおすすめ