いいことは、まず自分から。
そして、決して諦めない
中園 それは、三鈴さんがしてあげてるから。落ち込んだとき、私の場合は、まずは窓を開けて空気を入れ替える。それと、水泳。脚本家って、視聴率のストレスがすごいんですよ。1桁だったりすると、その日はおいしいご飯を食べても1桁、青空見上げても1桁……でも、泳いでいるとモヤモヤが飛んでいくような気がするので。
神野 自分に合った運動は、メンタルの薬にもなりますよね。
中園 そして、気の置けない相手に話すことかな。ネガティブなことは口にしちゃいけないって本には書いてあったりするけど、溜めるよりは出したほうがいいと思う。「今から愚痴をこぼします。ご馳走するから30分付き合って!」って。まあ、30分が2時間になったりするんだけど。
神野 アハハハ。次はぜひ私を呼んでください。いつでもご機嫌でいなきゃという強迫観念は持たなくていいけれど、世界と関わりながら自分でご機嫌になれる方法を見つけておくのって、大事ですよね。やなせさんがアンパンマンを通して書いたように、目の前に困っている人がいたら助ける、そんな人が増えていけばもっといい世界になるわけだから、まず自分から実践する。それが、大人のあり方だと思っています。
中園 やなせさんのことは、私も考えちゃいますね。だって、69歳でヒット作が生まれるって、すごいことじゃない? 人生、いつ何が起こるか本当にわからないから、やりたいことがあるなら、それをずっと続けて……そういう諦めない大人って、やっぱり素敵なんじゃないのかな。
神野 本当にそう! 若い頃は素直すぎて夢中になれなかったやなせさんの詩、今読み直してみたら、一周回ってすごい!って思えません?
中園 そうなの! 私も還暦過ぎてから読み返して、やさしい言葉でシンプルに、でもびっくりするくらい深いことが書かれていると……。
神野 井上ひさしさんの言葉に「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに」というのがあるんですが、難しいことを難しく言うのが偉いと思われがちだけど、難しいことをやさしく、伝えられたら。そんな大人でいたいです。
料理を作る、庭を掃くといった家事を慈しんできたことが、演技の礎にもなっている、という神野さん。
発酵玄米と無農薬栽培の梅でつくられたという貴重な梅干しは、神野さんの日々の食卓には欠かせない品。撮影現場のお弁当にも持参しているそう。
脚本家として、また占い師として「言葉」を生業とされてきた中園さんにとって、やなせさんの詩集と、占いの数式が書かれたノートは仕事の必需品であり、“お守り”のようなもの。写真中央の詩集『愛する歌』は中園さんのお母様からの贈り物。

連続テレビ小説「 あんぱん」
漫画家、詩人、絵本作家のやなせたかしと、暢(のぶ)の夫婦をモデルに、“ 逆転しない正義”を体現した国民的作品『アンパンマン』にたどり着くまでを描く。生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語。
脚本:中園ミホ
【出演】今田美桜 北村匠海 加瀬亮 江口のりこ
河合優実 原菜乃華 細田佳央太 高橋文哉
中沢元紀 中島歩 大森元貴/
二宮和也 戸田菜穂 神野三鈴 浅田美代子 吉田鋼太郎/
竹野内豊 妻夫木聡 阿部サダヲ 松嶋菜々子 ほか
毎週月〜土曜 午前8 時〜8 時15 分 NHK 総合ほかにて放送中
photograph: Isao Hashinoki[nomadica] styling: Kei Taguchi( 神野さん)
hair make-up: Hiroyuki Mikami [Mdolphin]( 中園さん), Yumi Narai( 神野さん) text: Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖2025年7月号より抜粋
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