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支える側から支えられる側へ。医療ソーシャルワーカーが体験した支援の壁と本当の寄り添い

支える側から支えられる側へ。医療ソーシャルワーカーが体験した支援の壁と本当の寄り添い

利用者になって気づいた“本当の寄り添い”

休職後、主治医の勧めで提携するデイケアに通い始めたSさん。ここでは、社会復帰を目指したソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けたり、再び体調を崩さないための考え方などを学んだりしていました。

やがて、地域ごとに設置されている地域若者サポートステーション(通称:サポステ)にも通うようになります。社会復帰だけでなく、趣味の話など気軽に話せる環境が心地良く、いまでも足を運ぶほどだといいます。

「病気になってから強い孤独感に苦しんでいたので、同じように悩んでいる人がいることや、自分の居場所があることが心の支えになりました」

休職中に不安だった“お金”の面では、傷病手当や自立支援医療制度(精神科に限り医療費が1割負担になる制度)を利用しました。

これまでの業務経験から、制度の存在や申請方法を熟知していたSさんですが、いざ利用する立場になると、想像以上にその壁は高かったといいます。

うつ状態だと体が重くて外出するのもままならないのに、窓口に行かなければ申請できないのが本当につらかったです。担当者の言葉遣いも、まるで子どもに話すようでショックでした」

さまざまな制度や施設を利用するなかで、Sさんは復職を意識し始めます。前職での環境や対人業務への不安から、障害者雇用枠での就職を検討。精神障害者保健福祉手帳は、初診日から6ヶ月以上経過していれば申請が可能です。Sさんも、通院から1年が経過していたため、申請に踏み切りました。

しかし、その裏で葛藤もあったといいます。

「名前の横に“障害者”と書かれた文字を見るたびに、これまでの自分が消えてしまったような気持ちになるんです。手帳を取得して半年が経ったいまでも、この現実に少しずつ向き合っている最中です」

支援する立場から支援を受ける側になったことで、Sさんのなかに新たな気づきが生まれました。

「支援を受ける人の気持ちは、頭では理解していたつもりでした。でも“本当の寄り添い”は、もっと繊細なものなんだと気づきました。相談に来た人に『暑くなかったですか?』『遠いところありがとうございます』の一言があるだけで、どれだけ救われるか今ならわかります。そして、相談者の病気や障がいの受容段階を気にかけるだけでも、より効果的な支援につなげられると思います」

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経験を味方に再び社会へ

障害者手帳を申請してから2ヶ月後、Sさんは一般企業の障害者雇用枠で再就職を果たしました。人事・採用アシスタントという、医療職とは異なる分野への挑戦です。

「障害者手帳の申請から就職活動中は、まるで自分自身を支援対象にしているような感覚でした。心は追いつかなくても、お金や将来への不安に押しつぶされないよう、とにかく前に進むしかなかったんです」

現在の職場は、時短勤務で定期的な面談もあることから無理のないペースで働けているといいます。Sさんは今回の就職を、社会への“リハビリ期間”と捉えこう語ります。

「これまでは、頑張りすぎてキャパオーバーになり、自分の心と体の声に全く耳を傾けられていませんでした。いまは、仕事が人生のすべてじゃないし、例え失敗しても、あとからいくらでも軌道修正できると思っています」

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