◆歩行者男性が“まさかの行動”に
だが、歩行者男性の口から出たのは、「横断歩道じゃ歩行者優先だろ!そんなこともわからねぇのか!」の一言。それも運転手に負けない怒声だったという。「私は当事者ではなく、 ただ現場に居合わせた第三者っていうのもありましたけど、『怖がるどころかブチキレてるじゃん!』と不謹慎ながらちょっとワクワクしちゃいましたね。こんな場面、なかなかお目にかかれないじゃないですか」
歩行者の男性は一喝した後、車の運転席側のドアのほうへ近づく。立ち止まったかと思ったら次の瞬間、いきなりドアに向かって蹴りを放ったのだ。
「大きな鈍い音が響いたので、なかなかの衝撃だったはずです。私が見る限り、蹴られた部分は明らかに凹んでいました」
◆被害者も手を出してしまえば加害者に
この後、歩行者の男性は走って車の後ろに抜け、そのまま車道から歩道へ斜めに渡り、小さな路地へ入ってしまったとのこと。一方の運転手はすぐ路肩に停め、車から降りて蹴られた箇所をしばらく眺めていたという。「百歩譲って怒鳴り返すだけならまだわかりますが、さすがに蹴っちゃダメですよね。もちろん自業自得な部分はあるため、ドライバーに同情はまったくできないですけど……。今はほとんどの車にドライブレコーダーが設置されているので、決定的な証拠になっちゃうのによくやるなぁとは思いました。まぁ歩行者男性としても、あの状況ならドライバーは警察に訴えないと判断しての行動なのかもしれませんが」
そもそも信号機がない横断歩道でも歩行者を確認した場合、一時停止を怠るのは、れっきとした道路交通法違反行為。また、車を蹴る行為も器物損壊罪に問われるおそれがある。
道路交通法を守るのは、マナーではなく義務。歩行者側として今回と似たような状況に遭遇しても、その場の感情に任せて車を蹴る、あるいは運転手に直接危害を加えることは言語道断。低すぎる怒りの沸点は、取り返しのつかない事態を招きかねないことを肝に銘じておかなければならない。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

